2026.9.8
ギリギリを攻めていて、さらっと読めるのに深掘りできる——占い師兼バーテンダーが読む『昼間のスターゲイザー』【鏡リュウジ×千田歌秋対談・前編】
深掘りできるネタが詰まっている
鏡 千田さんも言ってくださった通り、この本はめちゃくちゃ読みやすいんです。ディープなトピックを豊富に扱っているけど、さらっと読んでもらうこともできる。もちろんさらっと楽しんでいただくのもいいんですけど、読みやすさだけで進んでしまうともったいないとも思っています。
千田 深掘りができる本ですよね。表面上のラインでは非常に平易に対談しているけど、深く掘っていけるラインもある。章頭の「課題図書」を読んでみたり、対談にさりげなく名前だけ出てくる研究者や書名を調べてみたり、いくらでも脱線できるように作られています。
例えば、三回目の対話の「象徴の世界にもぐる」で十二星座の話が出てきます。星座が十二個であることと一年が十二ヶ月であることの関連性を東畑さんが尋ねて、鏡さんが「もともと天文学ではバビロニアで発明された六十進法を使っていた」とさらっと返していますが、ここなら「六十進法とは何か?」「バビロニアの暦はどうなっていたのか?」など、いろいろと調べていくラインがある。
この直後には、星座には植物のものがなくて動物ばかりであること、十二星座を英語で「zodiac」と言い、ギリシャ語で「生命」を意味する「zōē」から来ていることが話されています。読みながら、「なぜ星座は動物ばかりなのか?」「十二星座はどのように決まったのか?」といった疑問が浮かぶ人もいるでしょう。つまりこの一~二ページだけでも、真剣に調べたら何ヶ月もかけられるくらいのネタが詰まっているんです。 こういうものが山ほどあって、一つ一つ調べると大変なことになる。普通に会話としてつながっているからさらっと読めちゃうんですけど、深掘りしてみても大変面白い本だと思います。
鏡 千田さんが深掘りしたくなったのはどこですか?
千田 「占いの技術」の中で東畑さんが、技術を学んでもその通りに現場で動くわけではないとお話ししているのを深掘りしたくなりました。例えば、占いとカウンセリングの現場の違いと共通点についてなどです。
カウンセラーや心理士のお客様から、「今、こういうカウンセリングの技法を使いましたね」と言われることがあるんです。ただ、私はカウンセリングの勉強をしているわけでも、資格を持っているわけでもないのでわからなくて。きっとコミュニケーションの中でできあがっていく技術として近いものがあるのでしょうし、東畑さんのお考えを聞いてみたいですね。
鏡 それは東畑さんの関心領域でもありそうですね。『ふつうの相談』や『雨の日の心理学』という本にもありますが、心の援助は誰かとご飯を食べに行って愚痴を聞くことも含めて、誰しも日常的にやっているもので、専門職である心理士だけのものではないというのが彼の基本的なスタンスです。これは心の空模様が悪くない日のことであって、大雨が降った時には専門の心理士や援助職が登場するけど、それでも「ふつう」の人たちもお互いをケアしながら生きている。だから話の聞き方や、相談を聞いてもらう技術を知っておくといいんじゃないの、という。
だから今挙げたような本を読んでみると、何かヒントがあるかもしれません……あれ、また東畑さんの本の宣伝になってしまった(笑)。

後編に続く
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