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「大人の恋を描きたい」野原広子さんが語る、大好評の最新連載作『さいごの恋』に込めた思いとは?

中高年の大人の恋を描きたい

――主人公の西村清美の設定で参考になさった人物などはありますか?

人づてに聞いた人をいろいろとミックスして、自分なりにイメージして人物像作り上げた、というのはこれまでの作品と同じです。(主人公の)眼鏡におかっぱというのは、私の漫画では初キャラですね。年齢不相応の幼さを出したいと思って、こういうヘアスタイルにしました。

――タイトルに「さいごの恋」とあります。清美さんは、教師という仕事も忙しく、そもそも恋愛には興味がなさそうですが。

世の中には恋多き女性もいらっしゃいますが、私自身は特に「恋愛体質」でもないので(笑)、思春期の頃はマッチ(近藤真彦)が好きだったりしたのですが、これまで、男女ともにそんなに「大好き!」な人がいませんでした。
いつでも恋をしている人、すぐに好きな人を見つけられる人がいることも事実ですが、私のように、わりとそういう面で淡泊な人も多いのではと思っています。恋愛もある種の才能、という一面がありますよね。
また、仕事をそれなりに一生懸命こなして忙しくしていると、特に恋愛はどうでもよくなってくるというか。「推し」もいるし、と(笑)。気づいたら年齢も重ねてしまって、自分の生活のペースやこだわりはしっかりとできてくるし、収入もあれば、別に結婚なんてしなくてもいいか、となることも多いと思うんです。
ふと気づけば、結婚もせず恋人もおらず出産適齢期も過ぎてしまったという…モテないとかそういうこととは関係なく、実際、そういう人がいるのではないでしょうか。

恋も結婚も考えていなかった清美だけれど……。
恋も結婚も考えていなかった清美だけれど……。

――本作での試みなどを教えてください。

大人の恋を描きたいと思っています。
ただ、中高年の場合の恋愛は、10代や20代の若い時のような「キラキラ」「ドキドキ」でときめくものではなく、安らぎとか安心感とか、年齢を重ねたなりのものがあると思うんです。
ずっとひとり暮らしで仕事に追われて、なんでもひとりで決断している人が、気を許した他人に抱きしめられたい、甘えたい、あるいはどうでもいいことをおしゃべりしたいと思うときがあるはず。キスをするとか、実際に関係を結ぶとかではない部分にも「恋」はあるとも思いますし。

――これまでは恋愛に縁遠かったような46歳の主人公にも、そんな恋愛が展開されるのですね?

それは読んでいただいてからのお楽しみということで(笑)。
私が漫画を描く場合は常にそうなのですが、事前にある程度構成を考えて描き始めても、描きながら解答を見つけていく、発見があるということが多いので、想定外のセリフが出てきたり、登場人物が思いがけない行動をとったりするんです。
ですので、どんな展開になっていくのか自分でも楽しみにしています。

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野原広子

のはら・ひろこ●イラストレーター。作品に『離婚してもいいですか?』『離婚してもいいですか? 翔子の場合』『ママ友がこわい 子どもが同学年という小さな絶望』『娘が学校に行きません 親子で迷った198日間』『ママ、今日からパートに出ます! 15年ぶりの再就職コミックエッセイ』『消えたママ友』『赤い隣人』(以上すべてKADOKAWA)『お仕事はじめました!』(主婦と生活社)『人生最大の失敗』(オーバーラップ)『今朝もあの子の夢を見た』などがある。
2021年『妻が口をきいてくれません』『消えたママ友』2作により、第25回手塚治虫文化賞「短編賞」受賞。

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