2020.10.24
あだ名は「粘土」と「虫の裏側」 川村エミコ×爪切男初対談「人じゃないものに分類される喜び」
対談ゲストには、奇しくも同時期に「よみタイ」にて「クラスメイトの女子、全員好きでした」を連載していた、作家の爪切男さんをお迎えしました!
同じ年のお二人は、子どもの頃からの様々な共通点が見つかって、初対面とは思えないほどトークは大盛り上がり。イベントの様子をダイジェスト版でお届けします!
(聞き手・構成/「よみタイ」編集部 撮影/齊藤晴香)
すぐ好きになってしまう
――お二人は初対面ということですが、第一印象は?
川村 爪さんの本を読むと、周りに「いい女」が多いですよね。爪さんの見つめる角度がいいんだと思います。その子のいいところを見つけることができるって素敵。独眼竜で嘘をつく女の子との話も、嘘をつくのって普通は嫌だと思うけど、そこにキュンとして素敵だなと思っていたり。私も、初めて付き合った男の子が、国民的な人気の女性有名人のことを「同じクラスだったら絶対仲良くならない」って言っていて、そこにすごくキュンとしたんです。
私のエッセイは、読むと学生時代を思い出したと言ってもらうことがあるんですけど、爪さんの本もそうでした。恋した自分に嘘はないし、いいなと思えるところがたくさんありました。
爪 僕の場合はとにかく惚れっぽいんですよ。たとえばノートPCを開いて喫茶店で仕事しようとしても、店員さん、お客さん関係なく、店内にいる女性全員のことが気になってモヤモヤしてしまう。
僕は川村さんの本を読んで、同士を見つけたような気がしました。僕は、女の子が何を考えているのかわからないから、すごく知りたくなってしまう。連載にも書いた、とにかくすぐ吐いちゃう女の子のこととかも、「うわ、吐いた」で終わりじゃなくて、もっとその子のことが知りたいと思って、吐いた後の所作とか、翌日の様子とかずっと観察してしまう。そういうことをしているのは自分だけなんじゃないかって不安があったんですけど、川村さんもクラスメイトや好きだった人のことを僕以上に観察して、妄想していて嬉しかったです。
川村 私もすぐ好きになっちゃうから、普段は「乙女の蓋」をぎゅーっと締めてます。
飲み会とかで「次、何飲む?」とか聞かれただけで「わー! 私のこと見て気にかけてくれてたんだ!」って嬉しくなって、その人のことをずっと見ちゃう。
でもこちとら静かだから、自分の周りにどんどん空いたグラスが集まってきて、食器下げたり注文まとめたり、店員さんみたいなことやったりしていて。
そんな人生だったもんで、乙女心をコントロールできるようになったんです。心の鍵の付け方みたいなものがコントロールできるようになると、人生ちょっと楽になりました。
爪 僕は恋心のコントロールはいまだに全くできないですね。女子からもらったちょっとの優しさをずっと覚えています。
川村 わかります! 私も学生時代は全然できなくてキュンキュンしっぱなし。だから好きになった男の子のこととか書いていたら止まらなくなっちゃう。
私は小学校の頃からいじめにあっていたんですけど、暗いしネガティブだけど図太い部分もあったのが救いだったなとも思っています。人は人というか。普通は仲間はずれにされたら嫌だと思うんですけど、そういうのも特になく、ま、そんなもんかと。