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爪切男「クラスメイトの女子、全員好きでした」
小学校から大学まで――
さまざまなクラスで、それぞれの出会いがあった。
教室で、体育館で、廊下で、校庭で……。
時が経っても鮮明に思い出す彼女たちの面影。
ロングセラー『死にたい夜にかぎって』の著者が贈るスクールエッセイ。

前回は誰しも一度は集めたことがある「ベルマーク」と「ファーストキス」が関係する切ないお話でした。

今回は連載初の高校時代。成長した爪少年と「日本史B」が好きな女子。素敵な嘘の共犯者となったふたりのキュンとくるエピソードと言葉が満載のお話です。

嘘つき独眼竜 vs 恋するミイラ男

 クラスメイトの志村しむら はなは嘘つき女だ。ただ、私は彼女ほど素敵な嘘をつく女の子を知らない。

 一九九六年、高二の一学期、私と志村 華は同じ嘘を共有した。それは「青春」と名付けるにはあまりにバカらしく、「恋」と呼べるほど美しくはない記憶として、今も私の中に残っている。

 そもそも、私たちが仲良くなったきっかけは「日本史B」の授業だった。
 科目担当の「モリ爺」こと森川先生は定年間近のお爺ちゃん。教育への熱意はすっかり枯れ果てており、生徒には全く関心を示さず、ただ淡々と教科書を読み上げるだけの無気力な授業をする先生だった。

 いびきをかいて寝る生徒。
 漫画を回し読みするグループ。
 別の科目の勉強をしている優等生。
 授業そっちのけでイチャつくカップル。
 トイレに行ったまま帰ってこないヤンキー。
 ウォークマンで大好きなソフトバレエとBUCK-TICKを聴いている私。
 これらすべてをモリ爺は見て見ぬ振りをする。

 無法地帯と化した週二回の「日本史B」の授業。混沌とした教室内で、唯一真面目に授業を受けている生徒がいた。

 それが志村 華だった。

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爪切男

つめ・きりお●作家。東京都中野区在住。2018年1月、『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)にてデビュー。中央公論新社BOCにて好評を博した『男じゃない女じゃない仏じゃない』が来年書籍化予定。トークショー、物言わぬ変人役でのドラマ出演、サウナコンテストの審査員など、作家以外の活動も多種にわたって迷走中。

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