2021.7.18
読んで味わう食エッセイ「土を編む日々」。「よみタイ」スタッフ5名が選ぶ珠玉エピソード
「筍のありがたさに気づく」(編集H)
食べることも飲むことも好きな編集Hが選んだのは「第25回 八百屋の貸し」。
この回のテーマ食材は春の訪れと同時に旬を迎える筍。春の風、湿った土の匂い、芽吹きの香りが生々しく感じられるエッセイです。
季節のものを食すことに対する、信仰に近いような思いが感じられるエッセイでした。食べ物も一期一会で、その時を逃すと食べられないものばかり。寿木さんの、「旬」に対する緊張感が伝わってきます。
春になると、山間部に住む義両親から筍が届くのですが、ありがた迷惑の、迷惑の比率が高めだったそれが、だんだんとありがたいものに変わっていったのは、それだけ自分が年齢を重ねてきたからなのかもしれません。
さまざまな調理法を試してみた結果、「焼いて食べる」というのが一番おいしいと結論づけていたのですが、この回を読んで、「やっぱり!」と太鼓判を押されたようで嬉しくなりました。
エッセイでは日本酒と合わせておられましたが、ビールとも合います。
(編集H)
「食材の苦味と共にほろ苦い記憶も…」(編集T)
食の記憶と共に人生の思い出も蘇り、なんともいえないノスタルジックな気分に浸ることができるのも本連載の魅力で、それは寿木さんの言葉の力があってこそ。
そんな過去の記憶を刺激されるエッセイとして編集Tが選んだのが、「第23回 北の春」と「第7回 カレーのきた道」です。
「第23回 北の春」では池峰山を訪れた際に、せりやふきのとうといった山菜を収穫したエピソードが綴られています。岩手出身の私にとっては、山の幸の苦味とともに、田舎のほろ苦い記憶も呼び起こされるエッセイです。
「第7回 カレーのきた道」も何度も繰り返し読んでいる回です。冒頭で寿木さんの新人編集者時代の失敗談が明かされているのですが、実は私も編集者になりたての頃、配属されたばかりの雑誌編集部で料理ページを担当することになり、同じようなミスをしたことが……。反省しつつも黒歴史として封印していましたが、尊敬する寿木さんも同じような経験をされているとは! と、恐れ多くも勝手にシンパシーを感じて励まされています。
(編集T)