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翻訳家・村井理子さんが絶賛! ノンフィクション好きなら観るべき「ドキュメンタリー」3作

翻訳家・村井理子さんが絶賛! ノンフィクション好きなら観るべき「ドキュメンタリー」3作

漆黒の闇に引きずり込まれる『ゴールデン・ステート・キラーを追え / I’ll Be Gone in the Dark』

『ゴールデン・ステート・キラーを追え / I'll Be Gone in the Dark』U-NEXTにて見放題で独占配信 ©2021 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.
『ゴールデン・ステート・キラーを追え / I’ll Be Gone in the Dark』U-NEXTにて見放題で独占配信 ©2021 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.

 アメリカを震撼させた連続殺人鬼ジョセフ・ジェームス・ディアンジェロが最初の犯行から40年あまりの時を経てようやく逮捕されたのは、2018年4月のことだった。この逮捕の約2年前、誰もがその死を疑っていた黄金州の殺人鬼を、10年あまりにわたって執念深く追い続けた作家ミシェル・マクナマラが、数種の処方薬の過剰摂取によってこの世を去った。このドキュメンタリーは、ミシェルとともに犯人を追い続けた仲間と、残された夫であり俳優のパットン・オズワルト、そしてミシェルが残した原稿を『I’ll be gone in the dark』として出版した編集者が、生前のミシェルを回顧し、そして彼女の執念を世に知らしめようと奮闘する姿を追ったものである……いや、そうなるはずだった。大どんでん返しがあるのが実録ものドキュメンタリーの醍醐味だが、まさにそれが起きたのが本作だ。

©2021 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.
©2021 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.

 残された仲間と夫は、彼女の死後に出版された捜査録をプロモーションするため全米各地を回るのだが、なんとこの最中に、黄金州の殺人鬼が逮捕されるのである。それを夫パットンらが知った瞬間も、しっかりと映像に収められている。
 著者ミシェル・マクナマラがなぜ10年もの月日をかけて犯人を追い続けたのか、そしてなぜ彼女が命を落とさねばならなかったのか、考えれば考えるほど深い闇がそこにある。犯人に肉薄していた彼女が、その逮捕を見ないままこの世を去っていることが、何より胸に迫る。映像に残るミシェルの姿を見て欲しい。彼女の真っ直ぐな瞳を見て欲しい。闇に消えた犯人を追い続けた彼女が、とうとう闇に飲み込まれてしまった事実が、見る側をも漆黒の闇に引きずり込む。ノンフィクション=ドキュメンタリー好きであれば、見逃してはならない作品だ。

今回紹介した作品が観られる配信サービスはこちら(2021年12月現在)
『徘徊 ママリン87歳の夏』/アジアンドキュメンタリーズ
『アメリカン・マーダー 一家殺害事件の実録』/Netflix
『ゴールデン・ステート・キラーを追え / I’ll Be Gone in the Dark』/U-NEXT

「犬と本とごはんがあれば 湖畔の読書時間」大好評連載中!

翻訳家・村井理子さんの人気連載「犬と本とごはんがあれば 湖畔の読書時間」。隔週月曜日に更新中です。

この連載では、毎回エッセイのラストに、最近村井さんが読んだ本が紹介されています。これまで取り上げられた本は、コミックからエッセイ、実用書まで、多彩なラインナップ。
年末年始は動画鑑賞だけでなく、ゆっくり読書も……と計画されている方は、こちらの読書案内を参考にしてみてはいかがでしょうか。

「よみタイ執筆陣がハマったサブスク動画2021」特集一覧
その1◆「『フレンズ』で90〜00年代の感情を追体験」。「smart」元編集長・佐藤誠二朗さんが今年ハマった「シットコム」サブスク動画3選

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新刊紹介

村井理子

1970年、静岡県生まれ。翻訳家、エッセイスト。主な著書に『兄の終い』『全員悪人』『いらねえけどありがとう いつも何かに追われ、誰かのためにへとへとの私たちが救われる技術』『ハリー、大きな幸せ』『家族』『はやく一人になりたい!』『村井さんちの生活』 『村井さんちのぎゅうぎゅう焼き』『ブッシュ妄言録』『更年期障害だと思ってたら重病だった話』『本を読んだら散歩に行こう』『ふたご母戦記』『ある翻訳家の取り憑かれた日常』『義父母の介護』『エヴリシング・ワークス・アウト 訳して、書いて、楽しんで』など。主な訳書に『「ダメ女」たちの人生を変えた奇跡の料理教室』『黄金州の殺人鬼』『メイドの手帖』『エデュケーション』『捕食者 全米を震撼させた、待ち伏せする連続殺人鬼』『消えた冒険家』『ラストコールの殺人鬼』『射精責任』など。

무라이 리코
1970년, 시즈오카현 출생. 번역가, 에세이스트. 주요 저서로 『오빠가 죽었다』 『낯선 여자가 매일 집에 온다』 『필요 없지만 고마워: 항상 무언가에 쫓기고, 누군가를 위해 지쳐있는 우리를 구원하는 기술』 『하리, 커다란 행복』 『가족』 『빨리 혼자가 되고 싶어!』 『무라이 씨 집의 생활』 『무라이 씨 집의 꽉꽉 채운 오븐구이』 『부시 망언록』 『갱년기 장애인 줄 알았는데 중병이었던 이야기』 『책 읽고 나서 산책 가자』 『쌍둥이 엄마 분투기』 『어느 번역가의 홀린 듯한 일상』 『시부모 간병』 등이 있다. 주요 번역서로는 『요리가 자연스러워지는 쿠킹 클래스』 『어둠 속으로 사라진 골든 스테이트 킬러』 『메이드의 수첩』 『배움의 발견』 『포식자: 전 미국을 경악하게 한, 잠복하는 연쇄 살인마』 『사라진 모험가』 『라스트 콜의 살인마』 『사정 책임』 등이 있다.

X:@Riko_Murai
ブログ:https://rikomurai.com/

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