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【ティモンディ前田裕太×佐々木亮 特別対談/前編】 それぞれがハマったNetflix版『三体』の魅力。ハイレベルな映像化が宇宙への興味の扉を開く!

――『三体』は映像化もされ、3月からNetflixで配信が始まり、世界中で大ヒットしています。お二人とも既にご覧になったと思いますが、いかがでした? 映像化にあたって期待したところがあれば聞かせてください。

佐々木 僕が期待していたのは、やっぱり宇宙描写がどれだけリアルなのか、というところですね。なかでもいちばん楽しみにしていたのは、宇宙を明滅させるところ。

前田 夜空がチカチカするシーン。

佐々木 はい。小説での描写がいわゆる「宇宙背景放射」という現象を表している思うんですが、原作ではここに到達するまでのステップがめちゃくちゃありました。だからどう映像化するのかな、と思ってすごく楽しみにしていたら、予告編で夜空がチカチカしている映像が見えて、研究者としては正直ちょっとがっかりしました(笑)。

前田 そうだったんですか(笑)。

佐々木 わかりやすくするためだとは思うのですが、かなり単純化された表現になっているな、と。ただ、全体的には期待していた通りの映像描写でしたし、それ以上のインパクトがあるところもありました。
僕が好きなのは、3つ天体が直列につながったときに、一気に重力が変わって全員が浮き上がっちゃうところですね。あそこは良かった。

前田 良かったですよね。あの状況はリアルにあり得るんですか?

佐々木 3つの恒星が動いていて、それがたまたま惑星目線で見たときに直列に真上につながるのは相当な確率なんですけど、あり得る状況だとは思いますね。3つの星同士がどう影響し合うかまではわからないですが……。

――佐々木さんがNASAで研究していたときに分析していた天体は4つの恒星がぐるぐる回っている4重連星だったんですよね?

佐々木 そうです。三体ではなく、四体についてメインで論文を書いていました(笑)。

前田 三体なんて甘い。1個少ないぞと(笑)。ちなみに、四体はどんな世界なんですか?

佐々木 生物は生きられないですね、たぶん。太陽の1000万倍以上の爆発が起きる過酷な環境で、放射線の量とかもものすごく強いので、生命には適していないと思います。

前田 三体みたいな文明が成立する可能性はあるんですか?

佐々木 あそこまでの文明はさすがにちょっと怪しいと思います。だけど、実際に探そうとしている研究もたくさんありますし、今の宇宙開発を見ても住処になる惑星を探しているという流れがあるので、もしかしたらそのうち見かるかもしれません。

前田 まだ人類は月にしか行けてないですもんね。

佐々木 前田さんはほかの惑星に生命体がいると思いますか?

前田 そうですね。三体みたいな何かしらの文明があると信じたいです。そういえば、ちょっと脱線するかもしれませんが、『三体』の脱水のアイデアはクマムシを参考にしているのかなと思ったんですよ。

佐々木 どういうことですか?

前田 クマムシって、たしか周りに水がない場所では脱水して仮死状態になるんですよね。

佐々木 あぁ、なるほど。

前田 「乾眠」という 脱水状態になることで超低温や高温にも耐えられて、放射線にも強く、地球最強生物と言われているんですけど、『三体』の脱水はきっとこのクマムシの生態を参考にしているんじゃないかなって。僕が『三体』に夢中になったのは、宇宙はもちろん、ちょっとした設定からクマムシみたいな生物のことまでインスピレーションや興味が広がっていくところなんですよね。本当にすごい作品です。

 後編に続く

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新刊紹介

前田裕太

まえだ・ゆうた
お笑いコンビ「ティモンディ」として活動。読書好きとしても知られ、小説版『三体』の訳者の大森望さんとの対談企画にも参加。大人の週末Web、arWebにてコラム連載も執筆している。

佐々木亮

ささき・りょう
理学博士。独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わり、その経験と知見を生かし、ポッドキャスト「佐々木亮の宇宙ばなし」を毎日配信している。旬の宇宙トピックスを親しみやすく解説する内容で注目を集め、Apple Podcast日本ランキング3位を達成。第3回Japan Podcast Awardsも受賞する。現在はデータサイエンティスト、中央大学講師として活動している。
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X @_ryo_astro  

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