2020.1.29
川村エミコが経験した、大人の歯列矯正
わたしと歯並びとの戦い
ここから少し、大人になってから矯正したブスなおばちゃんのお話です。
歯並びが悪くなったキッカケは、小学一年生になったばかりの春。
予防接種を受けた帰り道。ゲリラ睡魔に襲われながらも、母に手を引かれながら、足の悪いおばあちゃんの為に眼科へ目薬を貰いに行かなければならず、横浜は鶴見の駅ビルの階段をエッチラオッチラ上っていました。
「眠いよー。」と言っているのに無理矢理手を引っ張られながら階段を上っていたその時です、ゲリラ睡魔がカウンターを食らわして来たと同時に顔からスッ転び、わたしの前歯2本は一瞬でさようなら。バキッ!という音と共に血がダクダク出たのを覚えています。
40になった今では眠い娘を道に置いて行く訳にもいかないという事情も分かりますが、当時は「注射を打ったばかりで眠いから歩けない」と伝えたにもかかわらず、無理矢理手を引っ張った母を本当に恨みました。
前歯2本が無くなった小学一年生の春から、ただでさえ無口だったわたしは更に話さなくなりました。
「一日に一言、えみこちゃんの声を聞ければ良い方ですね〜」と担任のこうさぎ先生に母は言われたそうです。
救いは顔面階段直撃でバキッとものすごい音と共に折れた前歯2本が乳歯だったことです。
ただ、折れた前歯2本から大人の歯が生えてきた為、前歯2本が幅をきかせ大きく成長してしまいました。それにより横の歯が入らなくなり、あれよあれよで、[ブス八重歯]の完成です。10歳にもなって無かったかと思います。
八重歯=可愛いのは、顔が可愛いからです。
大事なのは顔です。
ブスとくっ付いた八重歯は、ブス増し材料でしかないのです。
それから長く八重歯と付き合ってきました。
学生時代、「外国人は歯並びを見る!」という意見に、英語も出来ないくせにグローバルな自分を勝手に夢見ていたわたしは、何度も歯並びを治そうとしました。
その度、母に「八重歯可愛いわよ!」という何の根拠も無い魔法を掛けられ矯正には踏み切りませんでした。「そういうならそうなのかなあ。」という気持ちになっていました。
学生時代はともかく、芸人になってからは、家が無かったり、やっと借りたアパートは風呂なし! シャワーを借りに行く漫画喫茶では「また、おかっぱシャワーが来た」「でた! おかっぱシャワー!」とあだ名を付けられるほどの貧乏でしたから、矯正なんて夢のまた夢。