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スズキナオ「この世の隅っこの「むう」な話」

大好きなディズニーランドでメガネが吹っ飛んで足の指が自分史上最高にシワシワになった話

やっぱスペースマウンテン、最高!……のはずが

数十分待ちの行列に並び、いよいよ自分たちの順番がまわってきた。コースターは横に2人が並んで座れるようになっていて、我々4人は2列にわかれて乗り込んだ。

「スペースマウンテン」の内部は真っ暗でレールが見えない。自分たちがこれからどの方向へ運ばれていくか予測ができず、まるで本当に宇宙に投げ出されたような気分。すごいスピードで急なカーブを曲がったりして、そのたびにみんなギャアギャア騒ぎ、それが楽しい。

コースターが終点にたどり着き、「やっぱスペースマウンテン、最高!」などと言いながら明るい外へ出てみると、コースターで私の前の席に乗っていた2人のうちのひとり、Hが無言でうつむいている。そしてHの肩に手を置き、もうひとりの友人・Kが「ごめん、ほんと……ごめん。ごめん」と謝り続けている。

「なに? どうした?」と聞いてみると、疾走するコースターに揺られながら「フォォー!」と叫んでKが両手をあげた時に、隣にいたHの顔にその手が触れ、かけていたメガネがどこかへすっ飛んで行ってしまったというのだ。なるほど、確かに、いつもHの耳にかかっているはずのメガネが無い。降りる時にコースターの席内も確認したが見当たらなかったという。

「ごめん。マジでごめん。ごめん。係の人に拾ってもらおう……」と、さっきまで両手を挙げてはしゃいでいたはずのKも悲壮感漂う表情を浮かべている。スタッフを探して事情を話してみたのだが、そういった落とし物の捜索は閉園後にしか行えないという。もし見つかれば後日郵送してくれるとのことだったが、とにかく今すぐ探してもらうことは不可能なことがわかった。

スペースマウンテン内にモノを落とす人は結構多いそうだ
スペースマウンテン内にモノを落とす人は結構多いそうだ

Hはわりと度の強いメガネをかけていたから、メガネを失ってしまうと視界が一気にぼやけてしまうらしい。それでも「せっかくきたディズニーランドだし」と、その後も閉園時間まで意地で粘っていたH。入園して2つめのアトラクションでメガネを失くしてしまうなんて、不憫過ぎてかける言葉が見つからなかった。何度も繰り返し謝ってくるKに対し、Hが小さな声で「もういいよ……海賊は見れたから」と言っていたのを思い出す。海賊は見れたというか、海賊しか見れなかった一日。ちなみにメガネは無事に見つかり、後日、Hの自宅に送り届けられたそうである。

もう一つ忘れられないのは中学3年生の時のこと。
かつてメガネをすっ飛ばされたHがその時も一緒だった。そしてもう一人、Mという友人と3人で遊びに行った。

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スズキナオ

1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。
WEBサイト『デイリーポータルZ』『メシ通』などを中心に執筆中。テクノバンド「チミドロ」のメンバーで、大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。
著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』、パリッコとの共著に『酒の穴』、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』、『“よむ"お酒』など。
Twitter●@chimidoro

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