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スズキナオ「この世の隅っこの「むう」な話」
ふとした会話が、表情が、何気ない何かがずっと頭に残って離れない……そこで湧き上がる気持ちをスズキナオさんはこう表現することにした。「むう」と。この世の片隅で生まれる、驚愕とも感動とも感銘ともまったく縁遠い「むう」な話たち。

今回は、みんなの夢の国、ディズニーランドにまつわるナオさん自身の忘れられない「むう」なお話しです。

大好きなディズニーランドでメガネが吹っ飛んで足の指が自分史上最高にシワシワになった話

東京ディズニーランドに行くのが楽しみでしょうがなかったあの頃

中学生の頃、東京ディズニーランドに行くのが楽しくて仕方ない時期があった。なんせそんな年頃だったから手持ちのお金も微々たるもので、行けるのは年に2回か3回か、せいぜいそれぐらいの頻度だったと思うのだが、学校の友達と一緒によく遊びに行っていた。

30年近く前の話だから、フリーパスの価格も今よりだいぶ安かった気がする。それを買って、開園から閉園までずっと遊んでいた。人気アトラクションの長い列に並んでいる間はゲームボーイやゲームギアといった当時の携帯ゲーム機で遊んだ。続きもののマンガを10巻ぐらい持ってきている友達もいた。何回か行くうちにみんな慣れてきたもので、並んでいる間にいちいち会話をしたりしないのだ。

朝の早いうちとパレードの時間、そして閉園間際の時間帯は混雑が少しマシなので、そういった時間を人気アトラクションにあて、それ以外の時間には割と渋めの、それほど混まないアトラクションをめぐる。一緒に行く仲間の中ではそういうコース取りが定番化していて、ルーティンをこなすかのように園内をまわっていく。もう何度も乗ったはずの乗り物なのに、しかし不思議と毎回楽しい。そして閉園時間になって、暗い園内を入場者がみんなゲートに向かって歩いていく光景を眺めると「絶対またすぐ来よう」と思うのだ。

そんな中学時代のディズニーランド経験の中で、今も記憶に残っている場面が二つある。一つは学校の友達4人組で行った時のことだ。その時、私たちは中学2年生だったと思う。

何度訪れても新しい発見と楽しみが見つかる夢の国
何度訪れても新しい発見と楽しみが見つかる夢の国

フリーパスを購入し、いつも通り開園と同時に園内へ。小走りで向かうのは「カリブの海賊」というアトラクションだ。薄明りの中に浮かび上がる海賊の世界をボート型の乗り物に乗ってめぐっていくそのアトラクションが私たちはみんな大好きで、入園したらいつも真っ先にそれに乗る決まりになっていた。

「カリブの海賊」のボートに乗りながら「今日もまたディズニーランドに来ることができた」という喜びを噛みしめた後、我々はすぐに次の目的地である「スペースマウンテン」へ向かった。
「スペースマウンテン」は宇宙空間をイメージした屋内型のジェットコースターで、ディズニーランドの中でも間違いなく上位に入るであろう人気アトラクションである。開園したばかりのこの時間であれば行列もまだそれほどではないはずだと、早いうちに乗っておくことにしたのだ。

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スズキナオ

1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。
WEBサイト『デイリーポータルZ』『メシ通』などを中心に執筆中。テクノバンド「チミドロ」のメンバーで、大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。
著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』、パリッコとの共著に『酒の穴』、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』、『“よむ"お酒』など。
Twitter●@chimidoro

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