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サイコパスは性に奔放?遺伝子の影響は?進化心理学で考える反社会的人格

現代社会はサイコパスにとって都合がよい?

現代社会は、所属集団の変更が容易で人の流動が激しいという点ではサイコパスにとって都合がよいように思われます。しかし、その一方で、他人を傷つける行為をしながらもそれを完全に隠蔽することが、昔よりも難しくなっていることも確かでしょう。オンラインのコミュニケーションではログが残りますし、対面の会話でもスマホで簡単に録音録画ができます。

実際、パワハラやセクハラが明確な証拠とともに告発され、加害者が謝罪を余儀なくされる事態が増えています。こうした点は、サイコパスにとっては不都合でしょう。サイコパスにとって有利な点と不都合な点が混在するのが現代社会と言えそうです。

サイコパスに利用されないために

サイコパスの中にはコミュニケーション能力が高く、一見すると善人に見える人もいます。利害関係が一致している間は特に問題が発生しないことも多いでしょう。公的な場面では通常は契約書などを交わすため、サイコパスの利己的行為により被害が発生したとしても、被害者が法的にそれなりの補償を得られるような対策は比較的容易と思われます。

しかし、プライベートな関係の場合、そのままでは法的保護の対象になりにくい現実があります。自分の関わる相手がサイコパスで、利己的な行動によりこちらが被害をこうむった場合でも相手の開き直りや逃げ得を許さないために、少しでもおかしいと感じたら、やりとりの記録(オンラインのログ、スマホによる録音録画など)を取ることを習慣化するのが有効と思われます。

冒頭で紹介したサイコパス傾向の強いA氏のケースも、仮に当時のA氏の発言が記録に残っていて、証拠として提示されていたならば、責任を取らざるを得なくなった可能性が高いです。第三者、すなわち社会の大多数の人々から批判を受けるような状況となれば、損得勘定の結果として、それなりの責任を取ったほうが本人にとっても有益になるからです。サイコパスに良心や罪悪感をもつように変わってもらうことは困難です。いざというときのために自己防衛するのが現実的な対策と思われます。

 連載第4回は2023年2月公開予定です。※1月の公開はございません。

このコラムの著者である小松さん協力のもと、役者の米澤成美さんが作成したコラボ動画も公開中です!

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小松正

こまつ・ただし
1967年北海道生まれ。北海道大学大学院農学研究科農業生物学専攻博士後期課程修了。博士(農学)。日本学術振興会特別研究員、言語交流研究所主任研究員を経て、2004 年に小松研究事務所を開設。大学や企業等と個人契約を結んで研究に従事する独立系研究者(個人事業主) として活動。専門は生態学、進化生物学、データサイエンス。
著書に『いじめは生存戦略だった!? ~進化生物学で読み解く生き物たちの不可解な行動の原理』『情報社会のソーシャルデザイン 情報社会学概論II』『社会はヒトの感情で進化する』などがある。

Twitter @Tadashi_Komatsu

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