2023.5.3
どうして新宿ゴールデン街で働き始めるとモテるのか? 元・素人童貞が語る「欲望の三角形」
そんな山下さんの初連載の舞台は、いま新しいお店・若いお客さんが増えているという「新宿ゴールデン街」。
前回は、ゴールデン街で「何者かになりたい」という思いを考えました。
今回は、急激にモテ始めた山下さんが「モテる」という現象を考察します。
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「ゴールデン街で働いたら人生変わったwww」状態
こんばんは。このゴールデン街の連載をはじめて、ゴールデン街の文壇バーで働きはじめたら、急にモテはじめました。山下素童です。
『シン・ゴールデン街物語』というこの連載は2022年9月に開始しました。それと同じ時期に、連載のネタ集めの意味合いも含めて、ゴールデン街の文壇バー『月に吠える』で働きはじめ、8か月が経ちました。そしたら、人生に変化が起きたのです。急に「山下さんってモテるよね」と周りから言われるようになりました。「風俗行ったら人生変わったwww」という恋愛小説が10年ほど前に流行りましたが、それを捩るならば「ゴールデン街で働いたら人生変わったwww」状態なのです。
ゴールデン街がどのような街か知らない人のために簡単に説明しておくと、ゴールデン街というのは、新宿歌舞伎町にある、2000坪ほどの狭い土地に約300ほどの木造長屋の店舗が並んでいる飲み屋街です。1つの店は8席ほどのカウンター席しかない狭い空間で、本がコンセプトだったり、漫画がコンセプトだったり、音楽がコンセプトだったり、映画がコンセプトだったり、いろんなコンセプトのお店が立ち並んでいます。僕はその中で本がコンセプトのお店である『月に吠える』というプチ文壇バーで、週に1度、金曜日の24時から朝まで店番をすることにしました。
ゴールデン街の店番というのは面白いもので、同じお店であったとしても、店番に立っている人がどんな人かで、その日のお店の雰囲気がガラリと変わってしまうのです。『月に吠える』は毎日違う店番の人が立っているのですが、他の店番の人からは、
「お前が店番の日は性的な匂いがする女性が多い」
「客が山下さんに好かれようとして面白くなろうと頑張ってる」
「お前が店番のときは客がみんな縦向きに喋ってる」
と、嘲笑めいたことを言われています。
最後の「みんな縦向きに喋ってる」だけ注釈しておこうと思います。ゴールデン街は、基本的にはカウンターで隣会った人同士が喋る文化のある街です。一部、可愛くておじさん転がしの上手な女の子が店番に立っているようなお店では、背中を丸めたおじさんたちがカウンターにずらりと並んで女の子に気に入られようと飲んでいる雰囲気があって、そういうお店は「あそこはガールズバーだから」とか「みんな横向きではなく縦向きに喋るお店だ」と嘲笑気味に言われるわけです。
それと同じように、僕が店番のときにもお客さんが縦向きに喋ってる、と言われているのです。そういう嘲笑めいた意味も含めて「山下さんってモテるよね」とよく言われるようになりました。
一方で、風俗でしか性行為をしたことがない素人童貞を長年やっていて風俗レポの本なんかを書いているからか、毎週のように「僕は童貞です」とか「僕は素人童貞です」という男の子たちもお店にやってきます。人間というのは、コンプレックスのあった過去の自分に似た誰かの役に立ちたい、そうしたおせっかいにも似た気持ちが沸いてくる生き物です。不遜なことだとは思いますが、過去の自分に似た童貞マインド剥き出しな男の子の道しるべになれたらいいなという希望をもとに、なぜモテるようになったのか、ここに記しておこうと思います。
ここまで読んで、「いや、そもそもお前誰やねん」とか「ゴールデン街のそんな狭い世界の話でイキるなや」とか、既に思っている方もいらっしゃると思います。本当にその通りです。なにも反論ありません。
しかし少し事情だけ説明させて頂くと、ゴールデン街でよく飲んでいる人間の特徴として、ゴールデン街という狭い世界における自分の評判が人生の全てになってしまうという現象があります。僕もこの連載を始めてから毎週のように週3,4回ほどのペースでゴールデン街でお酒を飲む生活になり、もうゴールデン街における自分の評判が人生そのもののようになってしまってるわけであります。
だからゴールデン街で「山下さんってモテるよね」と言われただけで、こんな風にのうのうと、なぜ自分がモテるようになったのか、という話をネット上に書き込めてしまう精神状態に陥ってしまってるわけであります。ゴールデン街という小さな木造長屋が並ぶ街でお酒を飲み続けた結果、自分の脳ミソまで小さな木造長屋のようになってしまった人間の戯言だと思って、お付き合い頂けると幸いです。
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