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推しのメイドが客とつながった?! 責任感と嫉妬で揺れた柴田勝家の苦言

「店の中にいる限りは、みんなに平等なメイドさんでいて欲しい」

 後日、戦国メイド喫茶では新たな噂が流れていた。

「パピさんと朝倉きょうちゃん、付き合ってるらしいよ」

 誰となく流れた噂は止めることはできず、次第に店の常連の間で情報は共有されていった。秋葉原の人間はゴシップに異様に詳しいのだ。

「きょうちゃんがディズニーに行った日、パピもディズニー行ってたって」

「写真上がってたよな。同じ日にたまたま行くことあるか?」

 ちなみにワシも、パピさんときょうちゃんが同じ日にディズニーに行ってたことは知っていたが〝たまたま〟ということにしておいた。ほぼ事実なのだが、朝倉軍のワシが声高に言うことなどできない。当時のワシにとって大事なことは、このゴシップに流されずに場を収めることだった。朝倉軍の筆頭家老として、家名を保つことこそ肝要と信じていた。

「仕方ない、言うかぁ」

 だからワシは戦国メイド喫茶に行き、きょうちゃんを呼び出した。

「勝家さん……、話ってなに?」

「最近のことについて、やっぱり言っておかなくてはな」

 厳しいと言われた手前、苦々しい思いもあったが、やはりワシが言うしかないと思っていた。対峙するきょうちゃんは怯えるように、ただ身を固くするばかり。

「今のことも、先のことも含め、ワシはきょうちゃんが誰に好意を向けても良いと思っている。それは自由だ」

「うん……」

「しかし、たとえば店の常連などが見ている場所で特定の人に好意を向けるのは良くない。店の中にいる限りは、みんなに平等なメイドさんでいて欲しい」

「はい……」

 ワシの言葉が響いたのかどうか、そんなことを確かめる余裕もなかった。本当なら言いたくないことだったから、こっちが参ってしまうのだ。

(きっとパピさんみたいに、とにかく優しい方がモテるんだろうなぁ)

 などと思っていた。嫉妬である。

(ああ、そうか。今になって、なおやてんの気持ちが理解できたな)

 きょうちゃんも去った後の席で一人、ワシは元朝倉軍の友人のことを思った。彼が感じていた「なんか違う」が重くのしかかってくる。

 かくして、ワシのメイド喫茶生活二年目はあまりにも苦いスタートとなったのだ。

(つづく)

 次回連載第17回は7/14(木)公開予定です。

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柴田勝家

しばた・かついえ
1987年東京生まれ。成城大学大学院文学研究科日本常民文化専攻博士課程前期修了。2014年、『ニルヤの島』で第2回ハヤカワSFコンテストの大賞を受賞し、デビュー。2018年、「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」で第49回星雲賞日本短編部門受賞。著書に『クロニスタ 戦争人類学者』、『ヒト夜の永い夢』、『アメリカン・ブッダ』など。

Twitter @qattuie

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