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南和行「離婚さんいらっしゃい」
離婚をめぐるたくさんの悩みやさまざまな葛藤。そこには、夫婦、家族の数だけドラマがある。夫婦関係で悩んでいる人たちが、自分の人生を取り戻せるヒントが得られることを願って……大阪で弁護士として働く著者が架空でつづる離婚をめぐるセミノンフィクション。

家族を守るためです。私はカルトじゃありません!

fizkes@Shutterstock
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【マテ子の場合】

笑顔が取り柄のマテ子

マテ子は子供の頃から周囲の大人に
「朗らかな子」と言われていた。
子供の頃、はきはき喋るとほめられた。

リーダーになるのは苦手だったけど、
みんなと何かするときに、
「頑張ろう」と言葉にするとやる気になれた。

大学は幼児教育の学部に進学し、
保育士と幼稚園教諭の資格をとった。

志望動機を聞かれれば、
「子供が好きだからです」
と答えた。

それは本当だった。

大学を出てすぐに保育士として働き始めた。

保育士は給料も低く待遇も悪かったが、
マテ子は、子供たちを前に笑顔になれば、
自分の気持ちが晴れるのを実感できた。

子供たちから「マテ子しぇんしぇー」と抱きつかれて、
保育園に送ってきたお母さんお父さんに、
子供と一緒に「いってらっしゃーい」と言えば、
それだけで自分だけはすがすがしい、
キレイな空気を吸っているような気持ちになれた。

マテ子は嫌なときも「笑顔になれば」で乗り切った。

結婚と長女の出産とそして二人目の妊娠

大学の同級生の結婚式の披露宴で、
同じテーブルに座った新郎の同僚が夫だった。

夫は小学校教諭をしていた。

その日に連絡先を交換し、何度か食事をし、
ストレートに交際を申し込まれた。

夫もマテ子も、駆け引きのような恋愛が苦手だった。

短い交際期間だったが、
お互いの「好き」を確認し、
生活感覚も合ってそうだったから、
「それじゃあ結婚しよう」となった。

マテ子の結婚式の披露宴で司会は、
「笑顔がトレードマークのお二人です」と、
マテ子と夫を紹介した。

結婚して半年くらいで妊娠がわかったので、
マテ子はその次の3月で保育士の仕事を辞めた。

保育園からは、産休の形にして、
出産したら復職ということを求められたが、
子供との時間に専念したかった。

保育園で働くために自分が保育園を探すのも、
なんだかナンセンスな気もした。

「古い考え方かな」と思ったけど、
夫も賛成してくれたので、
マテ子は専業主婦として育児に専念することにした。

そして8月に長女が生まれた。

長女が生まれて1年と少したった秋、
二人目の妊娠がわかった。

マテ子も夫も子供が好きだから嬉しかった。

二人目の妊娠がわかってすぐ、
マテ子と夫、1歳になった長女の3人で、
年賀状用に撮った写真は、
「笑顔がトレードマーク」そのものだった。

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南和行

みなみ・かずゆき●1976年大阪府生まれ。京都大学農学部、同大学院修士課程卒業後、大阪市立大学法科大学院にて法律を学ぶ。2009年弁護士登録(大阪弁護士会、現在まで)。2011年に同性パートナーの弁護士・吉田昌史と結婚式を挙げ、13年に同性愛者であることを公言する同性カップルの弁護士による弁護士事務所「なんもり法律事務所」を大阪・南森町に立ち上げる。一般の民事事件のほか、離婚・男女問題や無戸籍問題など家事事件を多く取り扱う。著書に『同性婚―私たち弁護士夫夫です』(祥伝社新書)、『僕たちのカラフルな毎日―弁護士夫夫の波瀾万丈奮闘記』(産業編集センター)がある。
大阪の下町で法律事務所を営む弁護士の男性カップルを追った、本人とパートナー出演のドキュメンタリー映画『愛と法』が話題。
・なんもり法律事務所
http://www.nanmori-law.jp/
・南和行のTwitter
https://twitter.com/minami_kazuyuki
・吉田昌史のTwitter
https://twitter.com/yossy_nan

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