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カナダ266%、アメリカ132%…食料自給率37%の日本人が知るべき、巨額な輸入コストと食品安全のリスク

輸入頼りで脅かされる食の安全性

コロナ禍で、一時期、複数の国が、自国の食料を他国に輸出するのをやめるという措置を取りました。自国の人間を最優先にするのはもっともなことです。
日本の食品全体の食料自給率は37%にとどまっています
これは先進国の中でも最低水準で、カナダが266%、オーストラリアが200%、アメリカ132%、フランスが125%、ドイツが86%、イギリスが65%、イタリアが60%です(2018年度、農水省試算)。

しかもパンの原材料となる小麦の自給率はたった3%。
他の国が日本に小麦をはじめとする食料を売ってくれなくなったらどうするのでしょう。

海外から小麦を持ってくるということは、「ポストハーベスト」の問題もあります。
ポストハーベストとは、収穫後の農作物に施される農薬のことです。日本国内の法律では、収穫した農作物は既に食品とみなされるため、ポストハーベストは「添加物」として扱われており、添加物として指定を受けた以外のものは使用が禁止されています。しかし、輸入される農作物には、長距離輸送中の腐敗、発芽、カビや虫の発生を防ぎ、見栄えのよい状態を維持するために、ポストハーベストが使用されているものが少なくありません。日本では使用が禁止されていても、輸入品に関しては実質制限がないため、輸入農作物を食べることで農薬を体内に取り込んでしまっている可能性があるのです。もちろん小麦に限ったことではありません。海外から輸入されるレモンやオレンジ、グレープフルーツ、ナッツなどの中にはポストハーベストが使用されているものがあります。

田村さんも、前述の自著の中で、「食料を自給できないということは、食料の安全性に問題があるというリスクを引き受けなければならないということだ」と主張しています。

あなたは、安全性にリスクがあり、ポストハーベストの懸念があるかもしれない小麦から作られたパンだったとしても、一切気にすることなく「あ〜、おいしい〜、しあわせ♪」と言って食べることができますか?

今日、あなたが口にした食べ物は、どれだけの人が関わって作られたのか。何百人、時には何千人が関わっている場合もあります。
「いただきます」という言葉は、食材の命を「いただく」という意味もあるし、関わったすべての人への感謝でもあります。アフガニスタンでは国民の95%が満足に食事をとれない状況です(2021年11月21日現在)。
食に関わった人々への思いや食料自給率、食の安全、食品ロスといった問題を乗り越えて、今、食べ物があなたの前にあることを忘れないでください。

本連載は今回が最終回です。
ご愛読ありがとうございました!

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井出留美

いで・るみ●食品ロス問題ジャーナリスト
奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。「食品ロス削減推進法」成立に協力した。政府・企業・国際機関・研究機関のリーダーによる世界的連合Champions12.3メンバー。
『あるものでまかなう生活』(日本経済新聞出版)、『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬社新書)、『捨てないパン屋の挑戦 しあわせのレシピ』(あかね書房)など著書多数。
食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。

公式サイト●http://www.office311.jp/
Twitter●@rumiide

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