2021.11.23
カナダ266%、アメリカ132%…食料自給率37%の日本人が知るべき、巨額な輸入コストと食品安全のリスク
作った人の顔が見えないと捨てやすい
それだけたくさんのエネルギーとコストをかけて原料を手にいれて、作っているにもかかわらず、日本において、パンという食品は、捨てられる割合がとても高い食品です。
コンビニでもスーパーでもパン屋さんでもメーカーでも、他の食品に比べて廃棄される割合が高くなっています。
消費者に届く前に、多くのパンが捨てられているということです。
製パンメーカーの余剰生産発生率は、0.4%。0.4という数字だけ聞くとあまり大きく感じないかもしれませんが、その金額は33億円にのぼります。なお、飲用牛乳の余剰生産発生率0.03%(余剰生産発生額は9900万円)、納豆は0.05%(5900万円)ですから、いかにパンの廃棄率が高いかがわかります。特に、惣菜パンや菓子パンの余剰生産率が高く、とりわけ、惣菜パンの発生率は菓子パンの約2倍、食パンの約4倍にのぼります(2018年、流通経済研究所調べ)。
捨てないパン屋の田村さんが、パンを捨てなくなったきっかけはたくさんありますが、その一つについて、田村さんはご自身の著書『捨てないパン屋』(清流出版)で次のように書いています。
北海道で小麦を有機栽培する中川泰一さんの粉を使ったときに、「売れ残ったら、全部送ってください。買いますから」と言われました。ゾクッとしました。
農家さんがどれだけ思いを込めて、我が子のように麦を育てているのか、わかっていたつもりだったけど、わかっていなかったかもしれません。安い海外産の小麦粉をドカドカと使っていたら、こんなこと一生わからなかったでしょう。
私は常々、食べ物は、料理にしても食材にしても、作った人の顔が見える関係だったら、そうそう簡単に捨てられないと感じています。
田村陽至さんにとっての、有機小麦の生産者である中川泰一さんが、そういう人にあたるでしょう。一般の人にとっても、家族が作った料理は、食べるつもりで作ったわけですから、食べきれない場合はともかく、そのまま100%捨てるということは、まずありえないのではないでしょうか。
ところが、これが家庭ではなく、工業生産になると、食べないかもしれない、売れないかもしれないことがわかっていても、作って売る、ということが起こるわけです。
メーカーは欠品を恐れて多めに作る、販売店も「閉店まぎわのお客さんもいろんな種類が選べるように」と多めに仕入れる、こうしてどんどん食品ロスが増えていきます。