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カナダ266%、アメリカ132%…食料自給率37%の日本人が知るべき、巨額な輸入コストと食品安全のリスク

作った人の顔が見えないと捨てやすい

それだけたくさんのエネルギーとコストをかけて原料を手にいれて、作っているにもかかわらず、日本において、パンという食品は、捨てられる割合がとても高い食品です。
コンビニでもスーパーでもパン屋さんでもメーカーでも、他の食品に比べて廃棄される割合が高くなっています。
消費者に届く前に、多くのパンが捨てられているということです。
製パンメーカーの余剰生産発生率は、0.4%。0.4という数字だけ聞くとあまり大きく感じないかもしれませんが、その金額は33億円にのぼります。なお、飲用牛乳の余剰生産発生率0.03%(余剰生産発生額は9900万円)、納豆は0.05%(5900万円)ですから、いかにパンの廃棄率が高いかがわかります。特に、惣菜パンや菓子パンの余剰生産率が高く、とりわけ、惣菜パンの発生率は菓子パンの約2倍、食パンの約4倍にのぼります(2018年、流通経済研究所調べ)。

パン屋さんの前に捨てられていたパン(筆者撮影)
パン屋さんの前に捨てられていたパン(筆者撮影)

捨てないパン屋の田村さんが、パンを捨てなくなったきっかけはたくさんありますが、その一つについて、田村さんはご自身の著書『捨てないパン屋』(清流出版)で次のように書いています。

北海道で小麦を有機栽培する中川泰一さんの粉を使ったときに、「売れ残ったら、全部送ってください。買いますから」と言われました。ゾクッとしました。
農家さんがどれだけ思いを込めて、我が子のように麦を育てているのか、わかっていたつもりだったけど、わかっていなかったかもしれません。安い海外産の小麦粉をドカドカと使っていたら、こんなこと一生わからなかったでしょう。

私は常々、食べ物は、料理にしても食材にしても、作った人の顔が見える関係だったら、そうそう簡単に捨てられないと感じています。
田村陽至さんにとっての、有機小麦の生産者である中川泰一さんが、そういう人にあたるでしょう。一般の人にとっても、家族が作った料理は、食べるつもりで作ったわけですから、食べきれない場合はともかく、そのまま100%捨てるということは、まずありえないのではないでしょうか。

ところが、これが家庭ではなく、工業生産になると、食べないかもしれない、売れないかもしれないことがわかっていても、作って売る、ということが起こるわけです。
メーカーは欠品を恐れて多めに作る、販売店も「閉店まぎわのお客さんもいろんな種類が選べるように」と多めに仕入れる、こうしてどんどん食品ロスが増えていきます。

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井出留美

いで・るみ●食品ロス問題ジャーナリスト
奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。「食品ロス削減推進法」成立に協力した。政府・企業・国際機関・研究機関のリーダーによる世界的連合Champions12.3メンバー。
『あるものでまかなう生活』(日本経済新聞出版)、『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬社新書)、『捨てないパン屋の挑戦 しあわせのレシピ』(あかね書房)など著書多数。
食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。

公式サイト●http://www.office311.jp/
Twitter●@rumiide

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