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規格外、珍しい、流通の都合…理不尽な理由で捨てられる「未利用魚」。コロナ禍で注目を集める活用法とは?

小さすぎても大きすぎても捨てられる魚介類

捨てられるのは、あらだけではありません。
たとえばひらめは、通常1kgぐらいの大きさが主流ですが、中には7kgなど「規格外」もあります。規格外のひらめは、せりに出しても、料理人がさばききれないなどの理由で売れ残ってしまいます。
規格より小さくても大きくても売れ残って、その多くが捨てられてしまう……。これはひらめだけでなく、他の魚や貝でも言えることです。
輸送途中で魚同士が触れて、うろこが擦れてはがれてしまったらアウトですし、旬でない魚も歓迎されません。
一般的な魚ではないからという理由だけで捨てられることもあります。たとえば、北海道でよく食べられる八角はっかくという魚は、関東ではメジャーではないと理由で捨てられるケースがありました。

また、底引網では、ターゲットにした魚以外も獲れますが、それらは「未利用魚(未活用魚)」として港で捨てられます。
前回登場してくださった「ターブルオギノ」荻野伸也シェフによると、しらす漁師はしらすしか水揚げできないというルールがあり、網にかかったしらす以外の魚は捨てられてしまうので、それらを捨てずに活かしたいと活動しているそうです。
なんだか納得いかない話ですよね……。

江ノ島のしらす漁であがった未利用魚(画像提供/荻野伸也)
江ノ島のしらす漁であがった未利用魚(画像提供/荻野伸也)

そんな、もったいない運命にある魚たちを美味しく調理して出している「魚治うおはる」という居酒屋があります。
東京の有楽町駅から徒歩5分程度、ビルの地下にあります。ここがオープンしてから少し経ち、中目黒の高架下にも「魚治」が開店しました。
ここで出てくる魚は、セリで売れ残ったり、サイズが規格外であったり、一般的ではなかったりといった理由で、美味しく食べられるのに、市場で捨てられる運命にあった魚が中心です。

どんな魚を仕入れることになるのかは当日にならないとかわからないので、仕込みは、通常の居酒屋のように決まったメニューを決まった量だけ調理するより大変で、料理人の力量が問われます。有楽町店の開店当初はオープン時刻に間に合わず、大変だったそうです。
私はコロナ禍の前に取材を兼ねて食べに行ったのですが、私が訪れた日のお通しは、粒の大きさがそろわないはまぐりの酒蒸しでした。
メニューには、なぜこの魚が捨てられる運命にあったのかが手書きで説明してあり、普通に魚料理を頼むよりも味わい深く感じます。
この店の企画に携わった方が、島根県の漁師町の出身で、上京してから地元の漁師の友人に未利用魚の話を聞き、なんとかしたいという思いから、「魚治」を始めたそうです。

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井出留美

いで・るみ●食品ロス問題ジャーナリスト
奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。「食品ロス削減推進法」成立に協力した。政府・企業・国際機関・研究機関のリーダーによる世界的連合Champions12.3メンバー。
『あるものでまかなう生活』(日本経済新聞出版)、『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬社新書)、『捨てないパン屋の挑戦 しあわせのレシピ』(あかね書房)など著書多数。
食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。

公式サイト●http://www.office311.jp/
Twitter●@rumiide

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