2021.7.28
規格外、珍しい、流通の都合…理不尽な理由で捨てられる「未利用魚」。コロナ禍で注目を集める活用法とは?
小さすぎても大きすぎても捨てられる魚介類
捨てられるのは、あらだけではありません。
たとえばひらめは、通常1kgぐらいの大きさが主流ですが、中には7kgなど「規格外」もあります。規格外のひらめは、せりに出しても、料理人がさばききれないなどの理由で売れ残ってしまいます。
規格より小さくても大きくても売れ残って、その多くが捨てられてしまう……。これはひらめだけでなく、他の魚や貝でも言えることです。
輸送途中で魚同士が触れて、うろこが擦れてはがれてしまったらアウトですし、旬でない魚も歓迎されません。
一般的な魚ではないからという理由だけで捨てられることもあります。たとえば、北海道でよく食べられる八角という魚は、関東ではメジャーではないと理由で捨てられるケースがありました。
また、底引網では、ターゲットにした魚以外も獲れますが、それらは「未利用魚(未活用魚)」として港で捨てられます。
前回登場してくださった「ターブルオギノ」荻野伸也シェフによると、しらす漁師はしらすしか水揚げできないというルールがあり、網にかかったしらす以外の魚は捨てられてしまうので、それらを捨てずに活かしたいと活動しているそうです。
なんだか納得いかない話ですよね……。
そんな、もったいない運命にある魚たちを美味しく調理して出している「魚治」という居酒屋があります。
東京の有楽町駅から徒歩5分程度、ビルの地下にあります。ここがオープンしてから少し経ち、中目黒の高架下にも「魚治」が開店しました。
ここで出てくる魚は、セリで売れ残ったり、サイズが規格外であったり、一般的ではなかったりといった理由で、美味しく食べられるのに、市場で捨てられる運命にあった魚が中心です。
どんな魚を仕入れることになるのかは当日にならないとかわからないので、仕込みは、通常の居酒屋のように決まったメニューを決まった量だけ調理するより大変で、料理人の力量が問われます。有楽町店の開店当初はオープン時刻に間に合わず、大変だったそうです。
私はコロナ禍の前に取材を兼ねて食べに行ったのですが、私が訪れた日のお通しは、粒の大きさがそろわないはまぐりの酒蒸しでした。
メニューには、なぜこの魚が捨てられる運命にあったのかが手書きで説明してあり、普通に魚料理を頼むよりも味わい深く感じます。
この店の企画に携わった方が、島根県の漁師町の出身で、上京してから地元の漁師の友人に未利用魚の話を聞き、なんとかしたいという思いから、「魚治」を始めたそうです。