2019.4.26
インパクトが強すぎる店主が待ち構える旨すぎる焼肉(その1)
そして前菜。
テール蒸しはほろほろと崩れる柔らかさ、そして上品な味わいは黒毛和牛のテールの中でも上物であるのがわかる。
センマイ刺しはセンマイの中でも根元の分厚い部分だけを使った極上品。
名門以外でここまで立派なセンマイ刺しに出会ったことはない。
焼き物はミノとシマチョウから。
ミノは深い切り込みの入った大人のミノ。
ヤッキーからはエッチな解説が入る。
子供は食べちゃいけません。
シマチョウは腸壁である皮に臭みが全くなく、くにゅくにゅと口の中で踊り、噛み締めれば何とも心地良い歯切れ。
普段焼肉屋で見かけるものと同じ部位とは到底思えない分厚く立派な名門のギアラ。
ぐっと奥歯を押し返す力強さがあるが、さらに力を込めればザクッと歯が入る。
幾重にも旨みが重なったような味わいも素晴らしい。
誰もが好きなタンは、醤油の香ばしさで分厚いタン元にたっぷりと入ったサシのインパクトを和らげ、甘みを引き出してくれる。
横隔膜の一部であるサガリを塊のまま焼き始めたのはヤッキーが最初じゃないだろうか。
しっかりと火を入れてから目の前で切り分けてくれる。
そしてクライマックスはワサビを塗りながらの「ワサビの歌」熱唱。
このワサビの歌が聞きたくて通う常連さんも存在する。
ハラミはとにかく分厚い。
自分の中の本能を刺激するような野性味に溢れ、噛むほどに口の中を旨みのジュースが支配する。
見事に真っ赤な並ロース。
これをさっと火を入れるヤッキー。
タレと卵黄で味付けされた並のロースが驚くほど旨い。
完全に焼肉を理解したヤッキーにかかると、ここまで違う。
経産牛のロース芯。
経産牛だが、嫌な硬さはなく、むしろ柔らかい。
芸術的なサシが入った三角バラだが、ヤッキーは大根おろしと一緒にさっぱりと食べさせてくれる。
有名なスーパーホルモンとはカットしていない長いコプチャン。
八丁味噌ベースの濃厚な味噌ダレとの相性が抜群に良い。
焼く前のヤッキーの決めポーズから、ヤッキーの体幹の強さが伝わってくる。
〆は、そぼろご飯。
終始笑いっぱなしで、こちらが会話する余裕すら与えてくれないヤッキー。
しかしそれが異常に心地良い。
楽しさだけでなく、旨さも都内トップクラス。
しかし、最後に注意がある。
誰しもがこの絶倫コースが食べられるわけではない。
常連さんだけがこの絶倫コースを頼めるのだ。
しかも常連さんにも何段階かあり、その日一番の常連さんの席に店主・ヤッキー中村さんが付き、お肉も最も良い場所が運ばれる。
そう、名門には完全なる焼肉カースト制度が設けられているのだ。
我々お客はこの焼肉カースト制度の前では無力。
全てはヤッキー次第なのだ。
ヤッキーの絶倫コースを食べるためには、ただひたすらに通うしかない。
お店とのこんな付き合い方も面白いではないか。