2024.1.15
警察にコードネーム!?【逃げる技術!第7回】DV避難の前にやること
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住民票を動かすことで怒りを買う可能性が
また、住民票の異動についても役所の福祉課で相談しました。すまいを移したときに住民票も異動させるべきなのかどうか、と。すると即座に女性相談員さんからは「いえ、すぐに移すのはやめたほうがいいですね」と止められました。
パートナーに現住所を把握されかねないリスクもありますし(これについては後述の「支援措置」についても読んで下さい)、なんと、住民票を移すことでパートナーを刺激し、怒りを買うこともあるのだそうです。
いったいなぜ? と思うのですが、DV加害者がなにかの用事で住民票の写しをとったときに、「あれっ! うちの世帯に自分ひとりしかいないじゃないか」と気づくと「なにー、あいつめ、勝手に世帯から抜けやがって!!」と烈火のごとく怒りだすケースがあるのだそうです。
理解しがたい心理ですが、DVをする人というのは相手を自分の配下にある、所有物であると思っているふしがあります。ですから、メンバーが自分の監督しているチームから勝手に抜けるのが許せないのかもしれません。
もちろん、子どもに世帯を抜けられるとそれまで受給していた児童手当をもらいそこねる、などの経済的デメリットもあるのかもしれませんが、やはりメンツや支配欲、所有意識の問題が大きいように思います。
住民票を移すときには「支援措置」を
ということで、家出をしてもすぐに住民票を移す必要はないといわれました。わたしは住民票はいまだ移してはおらず、しかし現時点ではさほど困ったことは起きていません。ただ、これはおなじ自治体の中での引っ越しだからであって、実家など遠方に引っ越すと、また状況が異なってくるでしょう。
DV避難の引越しで住民票を移す場合には、加害者に転居先を知らせないようにする「支援措置」という手続きをとることができます。住民票を異動させるときに「支援措置をかけてください」と窓口で頼みましょう。これによって、加害者からの住民票の閲覧、戸籍の附票の写しの交付等を制限できます。
長年、支援措置関連の仕事を担当してきた職員の方によると、支援措置について「DV等によって傷ついた人生を再建する杖の役割を果たしています。必要がなくなれば、杖は自分から使わなくなるものですし、必要な間は使えばよい、そういう制度です」(※1)と表現されています。必要ならためらわずに使うべき制度です。
(※1)戸籍時報 2021年10月号「安全・安心のDV等被害者支援措置制度」についての質問等回答(1) (大阪府堺市中区役所市民課住民登録係 上田慶司)
支援措置も、100パーセント万全ということはない
ただし、ヒューマンエラーの事例は過去にあり、残念ながら万全とはいえません。
例えば香川県三木町では、支援措置を受けていた女性の住所などを記載した戸籍附票の写しを元夫の代理人弁護士に対して誤って2回交付しています。三木町は女性から提訴され、2023年12月に訴訟上の和解において謝罪し、解決金35万円を支払いました(※2)。
(※2) https://www3.nhk.or.jp/lnews/takamatsu/20231222/8030017526.html
また神奈川県逗子市では、ストーカー行為をしていた男性が、探偵を使って被害女性の住所を割り出し、女性が支援措置をかけていたにもかかわらず市役所から情報が漏れてしまったというケースもありました。
2012年11月、このストーカー男性は被害者宅を訪れて彼女を殺害し、その後に自殺するという、最悪の結末を迎えています。市は女性遺族から提訴され、損害賠償金を支払うこととなりました。
ここまでの執拗な加害例はまれかもしれませんが、しかし実際に起きています。もしご自身のケースについて不安なことがあれば、役所の担当者に率直に事情を伝え、ご相談されることをおすすめします。
また、第5回でも書きましたが、郵便局の転送サービスを使うと、相手が弁護士に頼めば転送先を調べることができてしまうので、新住所を知られたくないときには利用しないほうがよいでしょう。
DVで引っ越してもすぐに住民票を移す必要はありません。世帯から抜けることで、相手の感情を害する場合も。住民票を異動するときは「支援措置」で相手に転居先を知られないように。郵便局の転送サービスでは新住所がバレる可能性があります。
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