よみタイ

年末年始は魔の時?【逃げる技術!第6回】苦しかったら距離をとって

DVから子連れで逃げた編集者の藤井セイラさんが「安心・安全・HAPPYなDV避難」を描くエッセイ。モラハラって何? どこに相談する? 親にどう話す? お金は? 「離婚だって結婚情報誌みたいに明るく語りたい!」と、体験談&Tipsをつづります。

イラスト/藤井セイラ 監修/太田啓子弁護士(湘南合同法律事務所)

(編集部より:本連載は、1月1日(月)に更新する予定でしたが、能登半島地震を受けて更新を延期しました。著者も被災しており、まだ予断を許さない状況が続いていますが、今回は、お正月休みにモラハラやDVでつらい思いをされている方に向けて書かれた内容のため、著者ご了承のもと公開致します)

記事が続きます

モラハラに悩む人にとって、年末年始はつらい時

本年もどうぞよろしくお願いいたします。みなさん、冬休みをいかが過ごしでおいででしょうか? お仕事でお忙しい方もいらっしゃるかもしれません。

カップルや夫婦間のDVやモラハラに悩む人にとっては、ある意味、この年末年始休みは「魔の時」なのでは? と心配しています。わたしも、かつては年末年始がストレスでした。夫がヘソを曲げてしまうと帰省も突然に中止となり、ずっと黙ったままの夫と家にいることになるため逃げ場がなくなるのです。

クリニックや児童センターなども開いていないので、相談先やなんとなく世間話をするような場もなくなってしまいます。

何度かご紹介していますが、内閣府の相談窓口DV+(プラス)は年中無休で相談を受け付けているので、もしピンチだと感じたら思いつめずに相談してみてください。日中はチャット相談もできます。

Tips 30
こちらの2つは全国共通ダイヤルで、通話無料・24時間・365日つながります。
・DV相談窓口 DV+(プラス)0120-279-889
・もし「これは虐待では?」という場面に遭遇したら 児童相談所相談専用ダイヤル 189(いちはやく)

ソロ帰省、これから増えるかも

うちはモラハラなんて無縁! というケースでも、結婚していれば「帰省」という一大イベントが悩みの種になることもあるでしょう。

飛行機や新幹線の混みあう、そしてインフルエンザや風邪のはやる季節に、高いチケットを買い、あえて遠距離を移動して、「パートナーの実家」という異文化渦巻く「他人の家」にステイする――これは場合によってはかなりのストレスです(もちろん、エンジョイできればとても実りある「ハレの時間」となるでしょう!)。

大学時代の同級生で、結婚後、早くから「ソロ帰省」を実行していた人がいます。子どもを連れて実家に帰るのも、それぞれがソロなのだそうです。交通費も少なくてすみますし、じいじとばあばは気兼ねなく孫と思いっきり遊べますし、家に残ったほうはのんびりと一人で過ごせます。とても合理的です。これから増えていくやり方なのではないか、とわたしは思っています。

あたりまえのことですが、パートナー本人の価値観と、パートナーの親や親族の価値観は違います。そして、パートナーだって実家に帰れば親や親族の価値観に合わせてふるまうかもしれない。夫婦や家族が、「実家」という別の家族と一緒に過ごすと、「あれっ、この人、いつもの彼/彼女と違う」「自分の側に立ってくれない」と思うこともあるかもしれません。

もちろん、人にはいろんな自分があって当然なのですが、その様子を目のあたりにしたり、それに合わせて先方の投影してくるイメージ通りの「お嫁さん/旦那さん」や「彼女/彼氏」を演じようとすると、疲れてしまうこともあるでしょう。

お正月に復活する「大家族」のゴースト

また、お正月やお盆といった機会には、その場に集合したメンバー全員で「模擬大家族」が即座に発生するケースもあるかもしれません。

そこでは、女性たちは立ったまま台所と座敷を往復し、くるくると働きっぱなし、どっかりと座ってひたすら飲む男たちに、次々と酒を運ぶ――と、ここまでではないとしても、この名残はいまだに日本のあちこちにあるでしょう。

わたしが子どもの頃から結婚する前まで、実家で過ごしたかつてのお正月は毎年そうでした。なにも昭和ではなく、平成の話です。いま書きながら、懐かしさを覚えるとともに、ああ、そういうところで自分は育ったのだな、あのときは「これこそがお正月だ」と思っていたけれど、害もあったなぁ、とも感じます。

ちなみにわたしの子ども時代は、地域のお祭りやお葬式もそのスタイルでした。公民館やお寺のふすまを全部外して大広間をつくり、男衆は座って卓についてひたすら顔を真っ赤にして飲み、婦人部(と呼ぶのです)が台所を仕切り、ちょっとしたおかずを何種類もつくって小鉢に入れて次々と出します。

記事が続きます

1 2 3

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Facebookアカウント
  • よみタイX公式アカウント

関連記事

よみタイ新着記事

新着をもっと見る

藤井セイラ

編集者、エッセイスト。2児の母。東京大学文学部卒業後、広告・出版を経てフリーに。子育てに関連する勉強が好きで、気がつけば、保育士、学芸員、幼保英検1級、絵本専門士、小学校英語指導者資格、日本語教師、ファイナンシャルプランナー2級など、さまざまな資格を取得。趣味はマンガとボードゲーム。苦手なものはお寿司。最近、映画館で観たのはプリキュア。

X(ツイッター) @cobta https://twitter.com/cobta

週間ランキング 今読まれているホットな記事

      広告を見ると続きを読むことができます。