2024.1.15
警察にコードネーム!?【逃げる技術!第7回】DV避難の前にやること
イラスト/藤井セイラ 監修/太田啓子弁護士(湘南合同法律事務所)
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弁護士さん直伝! 役所で真っ先にすべき手続き
第5回では、DV避難の前に役所でチェックしたほうがよいことについて書きました。「予防接種券、医療証などの行政からの重要な送付物をどう受け取るか」「児童手当や幼保無償化償還金の振込先は変えられるのか」「国民健康保険への加入方法」などです。
これらは役所のDV相談で教えてもらったことなのですが、それとは別に弁護士さんとの初回の相談で「すぐにやってくださいね!」といわれた手続きがあります。
それは、「離婚不受理届」です。これを最初に耳にしたときは
「えっ、離婚をしたいのに離婚不受理とはいったい・・・・・・?」
とふしぎに思いました。
弁護士さんの説明は、こうでした。
「財産分与など離婚の諸条件がまだ決まっていない状況なのに、相手が勝手にこちらの署名・押印をして離婚届を出してしまう、というケースも可能性としてはありえます。
役所では、夫婦それぞれ本人が署名・押印したかまではチェックせずに受け付けますから、その離婚届は受理されるでしょう。いったん受理されると、くつがえすための手続はあるのですが、家庭裁判所に申し立てをする必要があり、大変な手間と時間がかかるんです。
ですから、先手を打って『わたし以外の人間が離婚届を持ってきても、わたしに確認せずにすんなりと受理しないでくださいね』という届出が出せることになっています」
「不受理届」で、勝手に離婚届が受理されないようブロック
それを聞いて、はぁぁぁぁ〜と妙に感心してしまいました。「勝手な内容の離婚届を出すですって? そんな悪いことをするやつがいるんだな!」という感心です。
先手を打つための法的手段が用意されているくらいですから、きっとこれまでそういうことをした先人たちがいたのでしょう。
なお、この届け出は、自治体の戸籍課でできます。結婚相手がどんな人かにもよりますが、ある意味、最重要の手続きといってもいいかもしれません。
夫から逃げようとはしているのですが、自分の中では、そうはいっても15年連れそった夫です。
いやまあ、たしかに客観的にみればとんでもない夫かもしれないけれども、まさかそんなひどいことまでするかな? と相手を信じたい気持ちもまだまだあって、弁護士さんや相談員さんが
「DV離婚ではこういうケースもあるから、あらかじめこうしておきましょうね!」
とアドバイスしてくださる度に
「はい」
と素直に返事をしつつ、内心、半信半疑なところもありました。いえいえ、うちの夫はさすがにそこまでひどいことはしませんよ、もっと話が通じるはず、うちの夫に限って、と。
まあ、わたしのこの甘い期待はのちに痛快なほどに裏切られていきます。いま現在も鮮やかに胸をえぐる発言が、離婚調停の場でしばしば繰り出されます。メールで送られてもきます。
その度に、ぐはぁ、とバトルもののマンガのように吹き飛ばされる思いです。ボディブローです。すぐに頭を振り払って忘れたいのに、夫の言葉は日常のあちこちでふと思い出され、わたしの心を暗くします。
夫は、弁護士さんや相談員さんの想定するラインすら軽々と超えていく猛者だったのです。ただ、夫の名誉のためにつけくわえておきますと、弁護士さんや相談員さんから「こういうことをする男性も多いので、気をつけて」と伝えられたものの、我が家ではまったく起こらなかった事柄もたくさんありました。
例えば、一時避難先のホテルをつきとめてやってくるとか、わたしの実家を訪問するとか、学校や園に子どもを迎えにくる、自宅に残していった持ち物を勝手に処分する、戻ってこられないように自宅の鍵を交換してしまう、などです。
ただ、また機会があれば書きますが、そういったこととは別に、うわー、夫からこんなことをされるのか……、とみじめに思わされた出来事もありました。15年間一緒に暮らしても、相手のことって全然わからないものなんですね。人間っておもしろいものです。
DV離婚を検討したら、役所の戸籍課で「離婚不受理届」の提出を。
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