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年末年始は魔の時?【逃げる技術!第6回】苦しかったら距離をとって

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もしも男女が別だったら、成り立つ風景だろうか?

これは性別役割分担に深く根ざした光景です。だってイメージしてみてください。この「逆」ってありえるでしょうか?

お正月の1月1日、ひとの家に、よそのおばさんやお姉さんが集まってきて、テーブルをつなげた大きな卓の周りにどかっと座り、女同士であれやこれやと新年の口上を述べあい、用意されたごちそうを食べながらひたすら酒を飲む。

去年のあれはどうだった、ああだった、あの人は早くに死んだとかなんだとか、でもいい葬式だったとか、顔を真っ赤にして口から泡を飛ばして話し、おばさんたちは無遠慮に大声で話して、立つのはトイレにいくときだけです。

おしぼりもおかわりもこぼしたものを拭くのもすべて、旦那さんやお婿さん、おじいちゃん、小学校高学年になった男の子○○くんがやってくれます。おばさんはやってきた親戚の子どもにお年玉をわたして声をかけます。「大きくなったなぁ」「優秀なんだって?」「この、すっかり色気づいて」などいいたい放題です。無遠慮にさわったりもします。

客間で酔って眠る親戚のおばさん達……ってこんなことある?

そのまま酔っ払ってホットカーペットや床暖房の上でウトウトと眠ってしまういぎたないおばさんやおばあさんもいます。

おじさんたちはそれを見て、さっと毛布を持ってきてかけたり、様子を窺っては緑茶を淹れたり、すかさず冷たいお水を出してあげたり、かいがいしくケアをします。余ったおかずを下げて皿に盛り直して冷蔵庫にしまったり、捨てて始末をしたり。コップや皿を洗ったり、そろそろ頃合いかと思ったら餅を焼いたり雑煮を出したり。みんなのおなかがいっぱいになれば、テーブルを一度すっかりきれいにして、ピカピカに拭いてから、今度はお茶菓子とおみかんと熱いお茶を。

おじさんとお兄さんたちで、集まった女の人たちのお世話をずっとするのです。これがニッポンの、正しいお正月。こう考えたら、ありえない光景だと思うのではないでしょうか。

でも男女逆だったら? 酒をずっと飲んで座りっぱなしなのが男性だったら? すると突然それは、よく理解できる、なじみぶかい風景になるのです。

しんどい場面に、無理して適応しすぎないで

以前のわたしはそういう場面に遭遇すると、無理してでもそこに適応することが大人のふるまいなのだ、と思っていました。中高生だった頃のわたしは、この場に早く適応してふるまうことこそが、親を喜ばせ、助けることなのだと信じこんでいました。

でもいまは違います。「あ、キツい」と思ったら、黙ってしらけた顔をしていたっていい、その中でしゃべりやすそうな人とだけしゃべっていたっていいし、こまねずみのようにくるくる立ち回って役に立つ人になろうとしなくてもいい、といまは思っています。ノリが悪い、空気が読めない、ええ、上等です。

この20年間で、日本中くまなくあちこちにコンビニができました。だから「ちょっとコンビニいってきます」と中座してもいいのです。年賀状買ってきますとか、アイス買ってきますとか、振込をし忘れてましたとか、なんでもいいんです。空気を断ち切りましょう。

もし年末年始やイベントなど、なにかしらの集まりで身の置き所のない気持ちになったら、そのことを思い出してください。大人になるというのは、過剰にその場その場に適応することではなくて、いつでも心の奥に自分らしさを保てることなのではないでしょうか。

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藤井セイラ

編集者、エッセイスト。2児の母。東京大学文学部卒業後、広告・出版を経てフリーに。子育てに関連する勉強が好きで、気がつけば、保育士、学芸員、幼保英検1級、絵本専門士、小学校英語指導者資格、日本語教師、ファイナンシャルプランナー2級など、さまざまな資格を取得。趣味はマンガとボードゲーム。苦手なものはお寿司。最近、映画館で観たのはプリキュア。

X(ツイッター) @cobta https://twitter.com/cobta

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