2022.5.7
【中村憲剛×島田慎二対談 前編】スタジアムやアリーナ…最高の舞台は、選手にも地方創生の力にもなる
スタジアムやアリーナという最高の舞台があれば選手ももっと頑張れる
中村
サッカーでいえばスタジアムですね。選手としては、日々の練習の積み重ねを発揮できる場所ですし、サポーターの方たちと感情の起伏をともにして一体になれる場所。それってやっぱり「非日常」なんですよね。みなさん大切なお金を払ってプレーを見てくれるわけですから、プロとして最高のパフォーマンスを発揮しなきゃいけないというプレッシャーもありますが、一方でそれによって成長もできます。サポーターの方にとっても週末にフロンターレの試合があるから、月曜からまた仕事や学校を頑張ろうと思っていただいて、また週末になってその場所で一緒になって喜怒哀楽を共にするという、本当に幸せで、大切な場所だと実感していましたし、引退して等々力陸上競技場でプレーできないのがとても寂しいんですよね(笑)。
島田
そう、スタジアムとアリーナは非日常の大切な場所なんですよね。先ほど憲剛さんに「ショーを観ているような」と言ってもらいましたけど、空間を最大限に利用してショーアップできるのも屋内のアリーナだからだと思うんです。川淵さんがその昔、自治体にスタジアム建設を呼びかけたら、「どうしてサッカーのためにスタジアムを造らなきゃいけないんだ」と反発を浴びたという話をされていましたけど、まさに我々も今、似たような状況にいます。「どうして地域の体育館があるのに、新しくアリーナをつくらなきゃいけないんだ」と。
ただ、私も千葉ジェッツ時代に経験しましたけれど、どれだけ各クラブが工夫と努力と投資をしても、やはりバスケの観戦環境として優れたアリーナを提供できる非日常性に勝ることは難しいんです。そこでしか経験・体験できない非日常性を生み出してファンを魅了し、そこに人が集まれば雇用や観光客が生まれるなど地域活性化にもつながる。ようはブロードウェイと一緒なんです。最高の演者がいて、最高のオーディエンスがいて、最高の舞台があることで、最高のエンターテインメントになるんです。
中村
よくわかります。最高の舞台があるから選手ももっと頑張れます。
島田
選手たちにプロフェッショナルとして頑張ってもらうためにも、選手たちを引き立たせる舞台を用意するのが我々の仕事なんです。
中村
VIPルームなどもアリーナの条件に入っているんですよね。
島田
はい。VIPルーム自体で稼ぐという観点はもちろんです。しかし、より多くの方に会場に来てもらいやすくするためだとも言えます。たとえばVIPルームや高額席をつくって、ある程度の売り上げをクラブが立てられるようになれば、逆に今より低額の席もつくる可能性もでき、子どもたちや多くの人を呼び込めます。また、VIPルームはいわゆる社交の場になりますし、(購入者には)そういうメリットも当然あります。ただ一番の目的は、事業としての拡張性とより多くの人たちにバスケに触れてもらうための状況を創ることのバランスをとっていくことかなと思います。
中村
なるほど。現役のころ、VIPルームが等々力陸上競技場にもあるという情報は持っていましたが、(重要性は)そこまでわかっていませんでした。引退してFRO(フロンターレ・リレーションズ・オーガナイザー)の立場でスポンサーの方々にご挨拶させていただく機会が多くなってきたことで、そういった方たちをしっかりとフォローしていく場所と必要性があるんだなと心から理解できました。
現役時代、チケットを買ってスタジアムに足を運んでもらえることに対して感謝の気持ちはもちろん持っていましたけど、外に出るようになりいろんなことを見聞きして、今はもっとその気持ちが強くなっています。だからこそ、選手にも気を抜いたプレーは絶対にしてほしくないという気持ちも強くなっています。
島田
Jリーグもプロ野球も、いろんな特色あるスタジアムが出てきたり整備されたりして、ファンのみなさんのテンションがグッと上がっていきました。Bリーグも同じようにうねりを起こしていきたい。そのためにもアリーナが絶対に大事になってくると私は信じています。
(後編に続く)
後編は5/14(土)午前9時配信予定です。お楽しみに! (取材時は感染対策を徹底し、撮影時のみマスクを外しています)
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元千葉ジェッツ社長として、クラブを事業面、強化面ともにリーグトップに成長させた実績を持つ、現B.LEAGUEチェアマンによる「経営者」「ビジネスマン」「ファン」「スポンサー」「地方自治体」……すべての立場に役立つ、わかりやすいスポーツビジネスの教科書決定版。