よみタイ

パンツを穿いた土偶とDNA

 また外からではまったくわからなかったが、お腹が出たと嘆いていた運動嫌いの人は、お腹の肉をぶるぶると振動させる器具を購入して、ソファでテレビをぼーっと観ているときに着けているといっていた。
「効果はあったの?」
「うーん」
 そのときは購入後三カ月ほどだったので、はっきりとした効果はまだわからなかったらしいが、八年過ぎても何も報告がないところをみると、彼女には効果がなかったようだ。
 最近では若い女性たちは、乳が垂れるのをおそれて、ナイトブラというものを着けて寝ているらしい。私が若い頃も、将来、胸のラインが崩れるのを防ぐため、日中と同じものを着けて寝たほうがいいという話をちらっと聞いたことはあった。私も含め、そのときの周囲の女性たちの感想は、
「ブラジャーがはずせて、やっと楽になれるのに、寝ているときにまで着けるのはいやだ」
 が大多数だった。今は昔と違って、下着に使われる素材もよくなっているのだろうから、寝ていても着け心地はいいのかもしれない。しかし最近、たまたまインターネットで見かけたコメントでは、
「ナイトブラを着けて寝るようになってから、悪夢を見るという人が多いらしい。自分も戦場にいる夢を見た」
 とあって、いくら楽になったといっても、下着を身に着けていないのに比べて、胸部や背中の部分に圧迫感があるのは間違いないので、それが悪夢に影響しているのかもしれない。
 何にしても人知れず努力を続けるというのは、よいことだ。私はそれができないだけである。遮光器土偶の先はどうなるのかと考えると、背丈は縮むだろうが、基本的な体型は変わりようがない。それならば母親のスタイルのよさは受け継がなかったけれど、私は古代からのDNAを継承して、堂々と生きていこうと思ったのだった。

次回は12月28日(水)公開予定です。お楽しみに!

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群ようこ

むれ・ようこ●1954年東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業。広告会社などを経て、78年「本の雑誌社」入社。84年にエッセイ『午前零時の玄米パン』で作家としてデビューし、同年に専業作家となる。小説に『無印結婚物語』などの<無印>シリーズ、『散歩するネコ れんげ荘物語』『おネコさま御一行 れんげ荘物語』などの<れんげ荘>シリーズ、『今日もお疲れさま パンとスープとネコ日和』などの<パンとスープとネコ日和>シリーズの他、『かもめ食堂』『また明日』、エッセイに『ゆるい生活』『欲と収納』『よれよれ肉体百科』『還暦着物日記』『この先には、何がある?』『じじばばのるつぼ』『きものが着たい』『たべる生活』『これで暮らす』『小福ときどき災難』『今日は、これをしました』『スマホになじんでおりません』、評伝に『贅沢貧乏のマリア』『妖精と妖怪のあいだ 評伝・平林たい子』など著書多数。

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