2022.10.26
外ネコ探しとテラスの足跡
テラスに降りてまじまじと足跡を分析すると、大きめでしっかりとしていたので、オスのようだった。ただ通過しただけではなく、テラスにしばらくいてくれたのが、とてもうれしかった。ただし、ここの部屋の契約で動物を飼うのは禁止なので、過剰に接触するわけにはいかない。飼いネコがただお散歩していただけかもしれないので、もちろん御飯などはあげられないし、声かけをするのもやめよう。私は逸る心を抑えつつ、ネコがやってきたという事実のうれしさをかみしめていた。それと同時に、浮かれすぎて正しい判断ができていないかもしれない、他の動物の足跡の可能性もあると、住んでいる区内で出没しているという、タヌキ、ハクビシン、アライグマの足跡を確認したが、どれとも一致せずに、やはりネコに間違いなかった。
それから毎朝、シャッターを上げるときに、どきどきしながらテラスを隅から隅まで眺めていたが、新たな足跡はついていなかった。そのうちお隣の大家さん宅の庭の工事がはじまった。作業をする人が出入りするし音もするので、日中はもちろん、夜も警戒して来ないのかもしれないと考えた。
私はこの部屋に新築で入居したが、その前はほぼワンブロックの広い敷地に大家さんの邸宅が建っていた。これは私の想像だが、そのネコは以前から、こっそり庭に出入りしていたのかもしれない。しかし大規模な家の建て替え工事がはじまったので、様子を見ていたが、やっとまた行っても大丈夫そうになったので、新しく建ったこの建物のところに来た可能性もある。
飼いネコか外ネコかはわからないが、私はいったいどこからこの子が来たのかが気になり、散歩のついでに、ネコを出入りさせていそうなお宅がないかと、辺りをきょろきょろと見まわす癖がついてしまった。そんな低い位置になぜ、といいたくなるような場所に、小さな出入り口が作られているお宅があり、ここのネコなのかなあと思ったり、うちの裏手にある、生け垣の古い木造のお宅を見ては、ここから遊びに来たのかななどと思ったりした。そんなことをしていないで、とっとと部屋に戻って、原稿の一行でも書けと自分にいいたくなったのだが、とにかくあれだけ待ちわびていたネコの棲息の形跡があったことで、私のテンションは爆上がりしていた。強い雨が降ると、そのせっかくの足跡が、あっという間に消えてしまうのが悲しかった。