よみタイ

群ようこ「六十路通過道中」

秘密の買い物とパールのネックレス

 パールは長い間、女性専用といった意識が根強かったのに、最近は若い男性にパールなのである。パールは女性的な雰囲気を醸し出すものなので、男性には難しそうな気がしたが、アイドルの若い男性がつけていても、変ではなかった。最近のアイドルの男性は、顔つきが優しく、体つきは細めになっていて、ごついタイプはほとんどといっていいほどいなくなった。そんな顔立ちや体型だから、パールが似合うのだろうか。
 雑誌で私が見たのは、タートルネックのセーターにパールのネックレスをつけ、オーバーサイズのカジュアルなシャツを羽織っている姿だった。アイドルの名前は忘れてしまった。遠目には白っぽい短いネックレスをつけているように見えたのだが、アップの写真でそれがパールだとわかったのだ。
 先日もテレビで、繁華街で若者にインタビューをしているのを観ていたら、何人かの男性がパールのネックレスをしていた。シンプルな一連のものだけでなく、ネックレスの円周の半分がパールで、半分が金属のツーウェイタイプだったり、中央にひと粒のパールがついたチョーカータイプだったりと、デザインはいろいろだった。みんなセーター、Tシャツといったカジュアルな服装にパールをあわせていた。
 若い彼らがつけているものの多くは、イミテーションだと思うけれど、インターネットで、老舗の宝飾店で男性用として売られているパールアクセサリーにどういうデザインのものがあるのかを調べてみたら、ほとんど女性用と変わらなかった。ネックレスの場合は金属部分が太めだったり、デザインが直線的だったりしたが、ピアスは男女とも同じようなものが多かった。値段はそれなりに立派だった。
 なぜ男性がパールを身につけるようになったのかを考えてみた。以前、男性用化粧品が登場したのも、女性の市場の伸びが見込めず、新しい市場開拓として、子ども用化粧品が登場し、そして男性用が登場したのだと思う。営業職の男性は、第一印象が大事だからと、ファンデーションを塗り、アイブロウコスメを使って眉毛を整え、仕事用の顔を作っていると聞いた。男性がネイルサロンに通うようになったのも、その一環だろう。
 それと同じように、すでにこれまでの販売市場が飽和状態になってきたので、女性の定番だったパールを男性にもという、戦略が練られたのではないか。男性用、女性用の垣根がなくなるのはいいことだが、男性にパールは、私のなかにはなかったので意外だった。女性がパールをつけるとフォーマル度が高まるけれども、男性がつけるパールはカジュアルな雰囲気になるのが面白い。

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群ようこ

むれ・ようこ●1954年東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業。広告会社などを経て、78年「本の雑誌社」入社。84年にエッセイ『午前零時の玄米パン』で作家としてデビューし、同年に専業作家となる。小説に『無印結婚物語』などの<無印>シリーズ、『散歩するネコ れんげ荘物語』『おネコさま御一行 れんげ荘物語』などの<れんげ荘>シリーズ、『今日もお疲れさま パンとスープとネコ日和』などの<パンとスープとネコ日和>シリーズの他、『かもめ食堂』『また明日』、エッセイに『ゆるい生活』『欲と収納』『よれよれ肉体百科』『還暦着物日記』『この先には、何がある?』『じじばばのるつぼ』『きものが着たい』『たべる生活』『これで暮らす』『小福ときどき災難』『今日は、これをしました』、評伝に『贅沢貧乏のマリア』『妖精と妖怪のあいだ 評伝・平林たい子』など著書多数。

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