2020.9.18
訪朝歴アリ! 作家・万城目学が観た『愛の不時着』 韓流ドラマにおける最強「壁」理論
実は、私は北朝鮮を訪問したことがある。
2011年11月のこと。
なぜに小説家が北朝鮮を訪問したかというと、文芸誌「小説すばる」の編集長が、
「今度、ワールドカップ予選が平壌で開催されますが、万城目さん、ちょっくら行ってみませんか? それでもって訪朝エッセイを書く」
という提案をくれたからである。
それを聞いたとき、「北朝鮮か。ちょっと怖いな」と正直に思った。しかし、サッカーそのものは大好きであるし、何より謎の国家北朝鮮がどんなところか知りたい、という好奇心が勝り、この降って湧いたような仕事を引き受けた。
ブラジルW杯を目指す、アジア3次予選の対北朝鮮戦。会場は平壌の金日成競技場。22年ぶりになる平壌での国際Aマッチを開催するにあたり、北朝鮮は150人の日本人サポーターの受け入れを表明した。すぐさま旅行会社が北京経由で平壌に向かう観戦ツアーの募集を始め、それに応募した。かくして、応援団の一員として私は平壌に潜りこみ、もちろん、生まれてはじめての北朝鮮、忘れがたき3泊4日の旅を体験したのである。
そんな私が見た、ドラマ『愛の不時着』。
話題は耳にするけれど、まだご覧になったことがない方もたくさんおられるだろうから、この前編ではネタバレなし。未見の方でも安心して読める内容に。ただし、後編では、遠慮のないネタバレを繰り広げつつ、忌憚なきドラマの感想を綴っていくつもりである。