よみタイ

群ようこ「今日は、これをしました」

引っ越しを控え、不用品整理をする

 日常に使うもののストックを持たないだけでも、相当に管理は楽になりそうだ。と思いながら箱詰めをし続けた。亡くなった飼いネコしいが使っていたトイレも、いちおうきれいにした後、ほぼ十か月、そのままにしてあったが、キャリーケースと共に処分した。新居はペット飼育だけではなく、一時預かりも禁止なので、今後も使うことはないだろう。
 所有品を選別して、梱包するのに飽きたら掃除に切り替える。処分するチェストや押し入れ用の小さなタンスを動かすと、すきまから、しいが大好きだったおもちゃが出てきた。私が残り毛糸で作ったポンポンである。最初は小さなネズミの形をしたおもちゃがお気に入りで、それを買っていたのだが、ネコの誤飲が多いと聞いて、それは全部処分した。
 他におもちゃをと考えているとき、たまたま残り毛糸が目についたので、それでポンポンを作ってやったら、とても喜んだので、十個ほど作っておいた。少し汚れてくると捨てていたので、全部捨てたと思っていたが、しいが遊んだついでに奥に突っ込んだままになっていたものが出てきたのだった。市販の似たようなボール状のおもちゃも買ってみたのだが、この手作りのほうのポンポンを気に入ってくれていた。これを投げるとジャンプして手で打ち落とす。それがとても上手なので、
「すごい、すごい」
 と褒めていたら、ずーっと飽きずに繰り返されて、こちらがぐったりしたこともあった。床に転がして遊んでもいたので、そうしているうちに、すきまに入ってしまったのかもしれない。いろいろなしいの姿が蘇り、
「そうか、そうか」
 としみじみしながら、ポンポンの匂いを嗅いだ後、捨てた。

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群ようこ

むれ・ようこ●1954年東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業。広告会社などを経て、78年「本の雑誌社」入社。84年にエッセイ『午前零時の玄米パン』で作家としてデビューし、同年に専業作家となる。小説に『無印結婚物語』などの<無印>シリーズ、『散歩するネコ れんげ荘物語』『おたがいさま れんげ荘物語』などの<れんげ荘>シリーズ、『今日もお疲れさま パンとスープとネコ日和』などの<パンとスープとネコ日和>シリーズの他、『かもめ食堂』『また明日』、エッセイに『ゆるい生活』『欲と収納』『よれよれ肉体百科』『還暦着物日記』『この先には、何がある?』『じじばばのるつぼ』『きものが着たい』『たべる生活』『これで暮らす』『小福ときどき災難』、評伝に『贅沢貧乏のマリア』『妖精と妖怪のあいだ 評伝・平林たい子』など著書多数。

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