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群ようこ「今日は、これをしました」

録画したテレビ番組を観る

 最近は何度も再放送されているようだが、Eテレの海外の洋裁番組「ソーイング・ビー2」も同じ日に観た。「スコットランドの伝統衣装対決」の回だったが、審査員がまず基本的な作り方、たとえば土台となる芯地をきちんとつけて、重くなりがちなキルトを支え、ウエスト部分をしっかりさせることなどを説明しているのを観て、
「ああ、それで」
 と思い当たるところがあった。二〇一九年の冬に、たまたま友だちと入ったデパートに、ポップアップショップが出店していた。チェックの布地で作ったオリジナルのスカートやジャケットなどが展示してあり、その一角に目をやると、今まで見たことがない、何ともいえない美しい色合いのタータンチェックのキルトがあった。とにかくその布地の色合いが美しかったので、思わず近づいてしまった。
 タータンチェックというと、だいたい頭に浮かぶ色合いがあるのだが、そのスカートの地色はピンクがかったベージュで、そこにオレンジ、濃いピンク、焦げ茶、グリーンなどの格子柄になっている。その格子柄も今まで見たことがないパターンだったのだ。
「色合いがきれいですね」
 スカートを穿いた店の男性に話しかけると、
「これはビンテージなんですよ。百年くらい前のものかな。草木染めなので、長い間に色が変わって、今はこの色になっているんでしょうね。昔はもっと色合いがはっきりしていたと思います」
 といってラックからはずして見せてくれた。手に取ったそのスカートはずっしりと重く、表地はウール、裏地には無地の木綿がつけられていた。何度も修繕された跡も残っていた。このキルトが作られたときは、まだ合繊の裏地が一般的でなかったのか、それとも伝統の衣裳に属するものには合繊はつけなかったのか、私にはわからなかったのだが、本物のキルトは男性が穿くので、想像以上に地厚でしっかりしていて、ずっしりと重いことを知った。そして後日、キルトの下には下着を穿かなかったらしいとわかり、それならば裏地に木綿が使われたのも納得できた。
 もうひとつ、サカナクションの山口一郎がプロデュースしている、「シュガー&シュガー」を観た。このシリーズ三回目らしく、私は二〇一九年放送の前二回は見逃していた。短い番組なのだけれど、そのなかで私がいちばん気に入ったのは、不定期に行われる「シュガシュガ将棋」のコーナーだった。将棋の対局が再現されている和室で、将棋盤を前に二人が対峙している。盤上の中央に置いてある、街で撮影した人物のファッション写真をめくり、その姿からどのミュージシャンが好きかを当てるというものだ。
 対局に応じてミュージシャン候補は違うのだが、将棋の駒が並べてある位置に、「嵐」「TWICE」「三代目」(三代目J SOUL BROTHERS)、「髭男」(Official髭男dism)、「ビリー・アイリッシュ」「QUEEN」「岡村靖幸」「工藤静香」「サカナ」(サカナクション)、などと書いてあるプレートが並べられている。そして写真を見て、好きなミュージシャンと思ったプレートを、前に移動させ、二勝したほうが勝ちとなる。
 たしかに昔は、ひと目でそのミュージシャンのファンとわかる、それ風のファッションの人たちも多かった。しかし今はよほど好きなミュージシャンのファンだと自己主張をしていない限り、推理するのは難しい。
 私も写真を見ながら、あれこれ消去法で考えてみたのだが、めくられた写真は、みんなビリー・アイリッシュのファンにしか見えなかった。どうして岡村靖幸のファンと見抜けるのか。私にはまったくわからなかった。当てた人は、写真の人の服装、たたずまいから醸し出す雰囲気を感じ取ったのだろうが、それがどこなのかを想像するのも面白かった。シュガシュガ将棋だけでひと番組作ってもらいたいくらいだった。
 放送時間帯に観たいテレビは年々、とても少なくなってきた。録画しておいた番組は、ちょっと観て面白くなければすぐに消す。スポンサーには申し訳ないが、CMも基本的にはすっとばし、観る時間を短縮している。録画してあったものの、興味が失せて観ないまま消してしまう番組も多くなった。うちのテレビは購入して十年目で、耐用年数ぎりぎりだが、たまにB-CASカードの調子が悪くなる。世の中には配信というシステムもあるし、このテレビが壊れたら、もう買い替えないだろうと、録画した番組を観たり消したりしながら思ったのだった。

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群ようこ

むれ・ようこ●1954年東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業。広告会社などを経て、78年「本の雑誌社」入社。84年にエッセイ『午前零時の玄米パン』で作家としてデビューし、同年に専業作家となる。小説に『無印結婚物語』などの<無印>シリーズ、『散歩するネコ れんげ荘物語』『おたがいさま れんげ荘物語』などの<れんげ荘>シリーズ、『今日もお疲れさま パンとスープとネコ日和』などの<パンとスープとネコ日和>シリーズの他、『かもめ食堂』『また明日』、エッセイに『ゆるい生活』『欲と収納』『よれよれ肉体百科』『還暦着物日記』『この先には、何がある?』『じじばばのるつぼ』『きものが着たい』『たべる生活』『これで暮らす』『小福ときどき災難』、評伝に『贅沢貧乏のマリア』『妖精と妖怪のあいだ 評伝・平林たい子』など著書多数。

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