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ミラノの自宅は、ささやかな楽しみの宝庫

ミラノとアッシジ。 スタイリストの栗原登志恵さんが、2つの町を拠点にイタリアに暮らして約15年。 夫、アメリカン秋田犬のクマちゃん(4歳♀)とともに、 都会と田舎、それぞれの生活を楽しんでいます。 イタリアでの日々を通して提案する、心地よい暮らしとは――。 日本に住んでいても、簡単に取り入れられるヒントの宝庫です。
キッチンのカラフルな缶。
キッチンのカラフルな缶。

寒くても、朝いちばんの空気を室内に取り込みたくて窓を開けると、
どこからかほのかにコーヒーの香りがしてくるのが、ミラノの朝です。
アッシジからミラノへ戻った時や、日本から帰国した時は、
まずDUOMOへご挨拶に行きます。
それからネイルサロンへ行ったり、整体へ行ったり、食料品のお買い物に出かけ、
都会のミラノを楽しみます。
犬のクマちゃんが一緒の時はスーパーマーケットの「EATALY」へ。
他のスーパーより犬の来店の門戸が広く、犬も入店ができるのです。
美味しい匂いの宝庫なのに、もちろん犬たちはその場で食べられません。
もどかしいであろう犬の気持ちを考えて、
つい早めに買い物を済ませてしまいます。
ここでは毎朝、モッツァレラ、ブラータなどフレッシュチーズが作られていて、
最高に美味しいので必ず買います。
チーズに合うスプマンテやワインもカゴの中へ。

マキネッタ(小型コーヒー沸かし器)。壁右手に見えるのは漏斗(じょうご)。
マキネッタ(小型コーヒー沸かし器)。壁右手に見えるのは漏斗(じょうご)。

初めてイタリアで生活し始めた頃、日曜日はほぼ休日のお店が多く
「リナシェンテデパート」くらいしか開いていませんでした。
慣れるまでに時間がかかるくらい、
日本の便利さが当たり前になっていました。
ミラノの家は広い広場に面した立地で、近くにスーパーマーケットがあります。
数年前にここが24時間営業になったのが嬉しくて、
用もないのに帰りが遅くなった時にわざわざ立ち寄ったこともありました。
美味しいジェラート屋さんもあります。
夏場は深夜まで賑わっていていて、長蛇の列に並ばないと買えないほどです。
午前中には新鮮な果物を使ってジェラートを作っているところを見ることもできます。
ご近所さんや顔馴染みの方々に会うと気軽に挨拶もしてくれて、
下町情緒に溢れています。

そんなミラノも、長引くコロナ禍で今は外出がままならず、
お家の中での密かな楽しみを見つけています。
少女のころから、小さな可愛い物や、キャラクター物が大好きで、
イタリアの家でも、本棚の少しの空間にキャラクターを飾ったり
コレクションの招待状などを飾ったりしています。

コレクションの招待状(奥のハート型)とタンタンの置物。
コレクションの招待状(奥のハート型)とタンタンの置物。

ミラノに引っ越す前の日本での話です。
仕事帰りの深夜のコンビニでミニチュアフードを買い集めては、自宅に飾り、
一人で楽しんでいました。
そんなとき、あるプレスルームで、ミニチュアの冷蔵庫を見つけました。
そのプレスルームの方もミニチュアフードを集めて冷蔵庫に収納していらっしゃいました。
すぐに購入し、真似をして手持ちのフードを収納して満足していました。
それら冷蔵庫もミニチュアフードも「嫁入り道具」のようにミラノに持ってきて、
今も、「大人のおままごと」をしています。
サランラップをかけたり野菜を野菜室に入れたり、
その冷蔵庫のドアを半開きにしたり閉めたりして、日々アレンジしながら飾っています。
実際の食事作りは、そんなおままごとの延長のようなものです…笑

タンタンのブックエンド。
タンタンのブックエンド。
バスルームのあひるたち。
バスルームのあひるたち。
エレガントなティーセットの間にかわいいものが…。
エレガントなティーセットの間にかわいいものが…。

生まれも育ちもミラノの「TOMOKISSIMANO」の
コスチュームジュエリーデザイナーの小川智子さんから、
「津軽塗の伊勢海老を作ろうかと思うのです!」と教えていただききました。
オマール海老が好きな友達の誕生日に差し上げて喜んでもらいたいから…
と料理上手な智子さんが丹精込めて取り組んだとのこと。
友達を喜ばせたいとの純粋な気持ちで扱ったオマール海老からの発想と
おめでたい伊勢海老の組み合わせ、しかも津軽塗!
どんな作品ができるのか興味津々でした。

以前から、現代アート展が開催されるミラノ、トリノ、ボローニャ、モデナへ
夫とともに出かけては鑑賞し、そのエネルギーに圧倒されていました。
現代アートをいつか家に飾りたい気持ちもあり、
伊勢海老の作品をアッシジの家のキッチンに置きたいと思ったのです。
以前から彼女の作品とお人柄のファンでしたので是非購入したい旨を伝え、
今か今かと出来上がりを楽しみにしていました。

納品して下さる時に、ミラノからアッシジの家へまで安全に運べる様にと、
智子さんが子犬サイズのワンちゃんバッグに伊勢海老を入れてくださいました。
お心遣いと作品への愛情も感じます。
これからもTOMOKISSIMAの作品から目が離せません。

小川智子氏による伊勢海老のオブジェ。色のバリエーションが豊富なほか、ミニサイズのブローチなどもある。http://www.tomokissima.com/index.html
小川智子氏による伊勢海老のオブジェ。色のバリエーションが豊富なほか、ミニサイズのブローチなどもある。http://www.tomokissima.com/index.html

今現在、伊勢海老はミラノの家に飾っています。
独特の存在感がありながら、どこかのんびりした雰囲気にエネルギーをもらっています。
いつアッシジへ連れて行こうか?
それともこのままミラノ?

そして、昨年から飾っているのは、イラストレーターのわたせせいぞうさんのカレンダー。
月めくりなのですが、切り取ってしまうのがもったいなく、
切らずにめくってはうっとりと眺めています。
私にとって、わたせさんのイラストは青春時代そのもの。
色褪せない魅力に引き付けられ、『ハートカクテル』を再読しようかな…と考えたり。

50代には懐かしい、わたせせいぞう氏作品。イラストを見れば、思いは一気に若い頃へ。
50代には懐かしい、わたせせいぞう氏作品。イラストを見れば、思いは一気に若い頃へ。

好きなものだけをたっぷりと詰め込んだミラノの自宅は、私の秘密基地。
長くなったおうち時間を楽しみたいと思います。

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栗原登志恵

1964年東京都中野区生まれ。スタイリスト。
文化服装学院の服装科在籍中に、ファッション雑誌「JJ」のスタイリストのアシスタントとなる。
卒院後、ファッションジャーナリストの大石尚氏のアシスタントを務め24歳で独立。
上品でコンサバティブながらも遊び心のあるコーディネートは、女性誌一般読者はもちろん、女優やタレントからも支持を得ている。
2006年からミラノ在住。仕事の際には東京とイタリアを往復している。別荘のあるウンブリア州のアッシジに滞在することも多い。

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