2026.10.23
シチューは、主菜なのか、汁物なのか、それが問題だ
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さて、固形ルーを使用する分岐として、次にポピュラーなのはビーフシチューということになるでしょう。こちらもやはりクリームシチューと同様の、主食を何にするかから始まる献立のスタイルの分岐があります。分岐の要素自体はほぼ同じですが、その内訳の割合は結構異なるものになる可能性が高そうです。
まず②、つまりシチューかけご飯の割合は急に高くなるのではないかと思われます。なぜでしょうか。見た目がカレーに酷似しているからでしょうか。もちろんクリームシチューより更にご飯が進む味ということもあるでしょうが、とにかくビーフシチューをカレーと同様「汁かけ飯忌避の例外」の枠に押し込むことに、人はあまり抵抗を感じないようです。実際いわゆる「欧風カレー」は、ビーフシチューにスパイスを加えたものとも言えますから、その違いは案外ささやかなものとも言えます。ビーフシチューが後述するハッシュドビーフ/ハヤシライスとも近しい存在である、という要因もありそうですね。
もうひとつビーフシチューがクリームシチューと大きく違う点として、こちらは外食でも定番の一品であるという点が挙げられます。オーセンティックな洋食屋さんのスタイルとしては、ビーフシチュー・ライス・サラダ・ポタージュといった感じでしょうか。
ただし外食のビーフシチューがあくまで肉料理であり、野菜は別で調理されたグラッセなどが付け合わせとして添えられるのに対して、家庭のビーフシチューは言うなれば「野菜と肉のごった煮」的なものになることがほとんどでしょう。それは汁も兼ねますから、別でスープが添えられることはまず無いかもしれません。
しかし一応そういうお手本があるので、シチューライスにしない場合は③-Aのシンプルで一点豪華主義的なものになることが多そうです。カレーや肉じゃがよりは、肉が塊でたくさん入っていることも多いでしょうしね。
さて最後にもうひとつ、忘れてはならないものがあります。そう、ハヤシライスです。家庭料理におけるハヤシライスは、言うなればカレーと対になるものとして定着しました。日本人がまだ辛さやスパイスにあまり慣れておらず、バーモントカレーのように子どもでも食べやすいように設計されたカレールーもまだ一般的ではなかった時代、それはカレーが苦手な人々の受け皿として重宝されたようです。
僕が子どもの頃、家庭でも給食でも、ハヤシライスは時々登場していた記憶があります。正直僕は大嫌いな食べ物でした。味も香りも甘ったるく、ひたすらどんより、もわーんとしている、という味そのものの印象もさることながら、「ここまでやるならカレーにしてくれよ!」「作る手間はいっしょだろ?」という口惜しさがそのマイナス印象を増幅していたように思います。
そう感じていた子どもは、そして大人も、結構いたのではないでしょうか。そしてカレーを補完する存在としての役割も終え、ハヤシライスは徐々に日陰の存在になっていきました。
しかしこのハヤシライス、案外しぶといところもあります。1991年発売のハウス食品「ハッシュドビーフ」は、言うなればハヤシライスの再出発とでも言えるものだったのではないかと思います。用意する食材は牛肉と玉ねぎのみになり、味も甘さを抑えて、ビーフシチュールーに近いデミグラスソース的なものになりました。つまり、より外食的で高級感のある味に生まれ変わったということです。
その後1996年には同じくハウス食品から「完熟トマトのハヤシライスソース」が発売され、今はこちらが一番人気といったところでしょうか。このデミグラスソース味からトマトソース味への人気の移行というのも、洋食系家庭料理のイタリアン化とでも言うべき大きな流れの中に位置付けられそうです。いずれその話もまた。
次回は11/13(金)公開予定です。
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