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レズ風俗で「推し」に出会った私に起こったこと

レズ風俗で感じた「気遣い」のクオリティ

 「例えば推しさんは、私が道をぼーっと歩いていたら、危ないからこっちに寄ってねって手を優しく引っ張ってくれるんです。お店に入っても、まず私の椅子を引いてエスコートしてくれる。テーブルもアルコールティッシュで綺麗に拭いてくれる。そういう細かいエスコートは、女風では、まず期待できないですよね。やっぱりレズ風俗の方が、断然気遣いが細かいんですよ。男の人よりも全然気遣いができると思います!」

 美月さんの話に私も思わず、「ええっ、すごいっ!」と感動してしまう。レズ風俗のキャストが素晴らしいとは聞いたことがあったが、そこまでだとは思っていなかったからだ。美月さんの話はあくまで一例である。きっと実際に利用してみると、その気遣いに驚かされることがもっとあるに違いない。
 美月さんがレズ風俗にすっかりハマった理由も、大いに納得させられるというものだ。
 私は、過去に女風ユーザーに聞いた女風のセラピストの残念エピソードを思い出していた。それは、一緒に食事をしている際などに、店員への粗暴な態度を見てガッカリするという話だ。美月さんも女風で同じような経験をしていた。しかし、レズ風俗ではそんな経験は一度もない。
 自分だけでなく周囲への細やかな気遣いができる――、それは多くの女性たちが「夢の世界」に入るための必須ポイントだ。女性はもともと、そういった気遣いを求められる場面が多いから、自然と相手がそれをしていることにも敏感になる。そういった意味でレズ風俗には大きなアドバンテージがあるだろう。
 聞いているとレズ風俗は、相手が同性ゆえ何を求めているか、読み取る力が格段に優れている気がしてくる。特に性的なことは、一瞬一瞬の相手への観察力が要求される世界だ。男性が女性の「演技」にまんまと騙されるのはよく聞く話だが、それは相手に起こる変化を、真の意味でとらえ切れていない部分もあるのではないかと思う。レズ風俗においては、女性の心と体に起きる快不快を瞬時に読み取り、男性以上のきめ細やかな対応をしているのではないだろうか。自分の心身に徹底的に寄り添い、耳を澄ませてもらえること、それは女性にとってそこはかとない安心感につながる。
 またこれは一般的な話だが、そもそも見知らぬ男性といきなり密室で一対一で会い、さらに性的なことをするのは、抵抗感を覚える女性も多い。その点レズ風俗は相手が女性なので、その一線を越えやすく、性的な悩みなども男性セラピストに比べて、気軽に相談しやすいというメリットもありそうだ。
 しかし、聞いているとレズ風俗の魅力とは、そんな表層のハードルの低さに留まらないのではないかという気がしてきた。気遣いが優れているのはもちろんだが、その根底に横たわっているのは、自分自身が心の底から大事にされているという根源的な安心感を、女性にもたらしてくれるからなのかもしれない。

写真:photoAC
写真:photoAC
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菅野久美子

かんの・くみこ
ノンフィクション作家。1982年生まれ。
著書に『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(角川新書)、『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)、『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』(双葉社)、『ルポ 女性用風俗』(ちくま新書)などがある。また社会問題や女性の性、生きづらさに関する記事を各種web媒体で多数執筆している。

Twitter @ujimushipro

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