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アラサー女子が「性のマンネリ」を解消するために選んだ女性用風俗の世界

性的ファンタジーを叶えてくれる相手

 その運命のセラピストは、いわゆるテクニックをウリにしている「テクピ」だった。専業で女風歴も長い。何より、Twitterのツイートやプロフィール紹介から、どんな性癖も受け止めてくれそうな度量の大きさを感じていた。
 朝香さんには、長年青姦(野外での行為)をしてみたいという願望があった。してはいけないシチュエーションでエッチなことをするのが興奮するからだ。家でも、ベッドよりもキッチンでセックスするほうが興奮するし、会社モノのAVなども好きだった。そんな願望もセラピストなら、わかってくれるのではないか。
 そう思った朝香さんは、二度目に会ったときに、自らの秘めたる願望をセラピストに打ち明けた。するとセラピストは、青姦は法律に触れるからできないが、これならどうかという代替案を考えてくれたという。

「『バルコニーから外が見えるラブホテルがあるよ』って、セラピさんが提案してくれたんです。それで、そのホテルでプレイしたんですけど、本当にものすごく興奮しましたね。私がこれをしたいという願望に対する提案が、すごく上手なんですよ。本当に褒めるところしかないですね」

 朝香さんは、そのひと時を思い出したかのように、嬉しそうに目を細める。かつてセフレに同じ話をしたことがあったが、「普通でよくない?」と一蹴された。仮にその願いが叶ったとしても、無理に自分の性的嗜好に付き合わせているようで、申し訳なく感じていただろう。しかしセラピストは、何よりも性的なことに対しての引き出しが多く、一緒に開拓していこうという意欲がある。
 その後もセラピストとは、性感だけでなく、色々な「やってみたいこと」にチャレンジした。ネットカフェに行って、エッチな映画を見ながらキスを我慢してみたり、またカラオケボックスで、イチャイチャプレイにも挑んだ。
 ちなみにその原型は、かつてBS系のアダルト番組の、「手コキカラオケ」という企画である。AV女優やデリヘル嬢に、手コキされながらカラオケ高得点を目指すという面白企画で、密かに話題となったものだ。そのシチュエーションに興奮していた朝香さんは、以前からやってみたいと思っていたという。

「さすがにカラオケボックスで手コキはしなかったですが、歌いながら服の上からお互い、太ももとかを触ったりしましたね。それで、声を出したほうが負けというプレイをやったんです。セラピさんは、すごくノリノリで一緒にチャレンジしてくれたんです。すごく興奮して、面白かったです。セラピさんとは、毎回違う体験ができるから楽しいし、飽きないんですよね」

 それまで変化の乏しかった性生活が、女風によって一気にバラ色になった。
「香り」も重要な要素だった。セラピストの香水の匂いを嗅ぐと途端に性欲のスイッチが入るようになってしまったのである。

「彼が付けている香水の匂いが、すごく好きなんです。ベッドで香水の匂いを嗅ぐとスイッチが入ってエッチな気分になるんですよ。前回のプレイのすごく気持ちよかったことを思い出すんです。匂いって残るんですよ。だからカラオケとかネカフェとか行ったときも、抱きついて彼の首の匂いを嗅ぐと、急にパブロフの犬みたいにめちゃ興奮し始めるんです。これは、沼の要素ですね」

写真:photoAC
写真:photoAC

 匂いの話をする朝香さんは、うっとりした表情を浮かべている。どんな香りか気になって尋ねると、アンバーとフルーツが交じり合った甘いフレグランスとのことだ。朝香さん自身、その匂いが忘れられず、フレグランスショップに行って、実際にその香水を手に取ったことがある。しかしいざ店頭で香りを嗅いでみても、特に心が動くことはなかった。
 彼の体臭と香水が、絶妙に交じり合った香りによって、自分は初めて発情するんです――、そんな朝香さんの話を聞いていると、私まで思わず胸がドキドキしてしまう。
 性的魅力に溢れるセラピストだが、何度も予約をして気心が知れてくると、性感だけでなく、友達同士のように気軽に飲むことも増えてきている。

「仕事が疲れて、今日ちょっと1、2時間だけさくっと飲みたいなってときがある。そんなときに、いきなり友達を呼び出すのも難しいじゃないですか。そこで、ふらっとセラピストを呼んだりもします。あと、生理中のときですね」

 そんなセラピストとの時間は、何よりも朝香さんの日常生活のストレス解消と癒しになっている。友達同士のように、何でも話せる素でいられる存在でありながら、朝香さんの求める性的願望の形を、しっかりと捉え、叶えてくれる相手。そんな相手がいたら確かに、「沼」にズルズルとハマってしまうのも頷けるというものだ。

(後編へ続く)

後編は11/27(日)公開予定です。

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菅野久美子

かんの・くみこ
ノンフィクション作家。1982年生まれ。
著書に『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(角川新書)、『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)、『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』(双葉社)、『ルポ 女性用風俗』(ちくま新書)などがある。また社会問題や女性の性、生きづらさに関する記事を各種web媒体で多数執筆している。

Twitter @ujimushipro

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