2021.5.22
「持たざる女」たちの戦い。 美貌、結婚、子ども、キャリア…互いを比べ合う苦しい友情(第9話 妻:麻美)
苛立つよりも呆れる。「幼稚な夫」
「おい。誰にLINEしてる」
怒りを露わにした夫に怒鳴られても、麻美は何も感じなかった。
心地良く酔って帰宅したのは深夜1時近く。さすがに“やりすぎた”という自覚はあったけれど、わざわざ寝ずに自分を待ち構えていた夫には苛立つよりも呆れた。
大人しく家で料理でもしていれば、妻に関心を払うこともなく、大した会話もせずに22時にはさっさと就寝する男なのに。
その身勝手さと幼稚さにうんざりしてしまう。
「……梨花よ。家に着いたって連絡しただけ」
康介を適当にあしらいスマホに向かうと、つい口元が緩んだ。
『次はいつ会える?麻美のこと、帰したくなかったよ』
マメな晋也は、きちんと麻美の欲しい言葉をくれる。
背後にいる夫の怒りが高まるのが手に取るように分かった。いい気味だと思う。自分は夫仕様のお飾り人形ではない。
抱き合いもしない、抱かれたいとも思わない男に義理立てする必要もない。
とはいえ、夫が自分を逃げ道がなくなるまで追い詰めることはしないことも分かっていた。都合の良い“妻”という器を求めているだけの、臆病な男だから。
――好きなだけ勘繰って、勝手に悶々としてればいいわ。
麻美は鼻歌でも歌いたい気分でシャワールームへ向かう。疑うだけ疑えばいい。別にやましいことなんてない。
実際、晋也とは何もせずに帰ってきたのだから。
……今の時点では。