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不良夫婦
あなたは「結婚」という制度に疑問を感じたことはないだろうか。

連日メディアを騒がせる不倫ゴシップは氷山の一角。女性の社会進出、SNSや出会い系アプリの普及……出会いの機会が爆発的に増える一方、多くの夫婦が良好な関係の維持に苦戦しているのもまた事実。セックスレス、不妊、モラハラ、DV……問題は山積みで、それが令和時代の夫婦を取り巻く現実だ。

これは120年以上も変わらない今の結婚制度に限界を感じ始めた夫と妻が、それぞれの視点で語るストーリー。

仮面夫婦状態の櫻井夫婦。夫・康介は妻からの子作り提案を拒否したことからセックスレスとなりクライアントの小坂瑠璃子との不倫に溺れていたが、妻の浮気現場を目撃したことで状況は一変。妻の希望を受け容れ体外受精による妊活を開始、すんなり子どもを授かる。ついに「不良夫婦」を脱したのかと思われたが……。


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(隔週土曜で更新予定です)

愛娘を授かっても、新たな女に溺れる…不倫をやめられない夫の心理(第22話 夫:康介)

「先生……好き」と囁く女に覚えたデジャブ

「先生……好き」

露わになった胸を押しつけ、肢体を絡める女の髪を、康介はあやすような手つきでゆっくりと撫でた。

その刹那、デジャブを覚えて一人で失笑する。

――結局、こうなってしまうのか。

およそ1年半前にも、康介はこうして妻以外の女と抱き合っていた。あのとき「好き」と囁いたのは、今となりにいる“茜”ではなく“瑠璃子”だったが。

内心を隠すように窓の外へ目をやると、闇の中、眼下に広々と堀が広がっていた。初めて一線を超える夜だから、奮発してペニンシュラに部屋をとったのだ。

茜は櫻井法律事務所で康介の秘書をしている。麻美とは系統の違う、どちらかといえば瑠璃子に似たタイプの明るく愛らしい女性で、採用時から好感を持っていたことは確かである。

とはいえ、手を出す気などなかった。ところが茜のほうから「奥さんがいてもいい」「関係ない」などと積極的に迫ってくるから、関係ないことはないだろうと警戒しつつも次第にほだされてしまったのだ。

妻の麻美が体外受精で妊娠し、愛娘が生まれて、まだ半年しか経っていない。

子どもを授かったと知った時、康介は確かに感じた。ようやく麻美と「真の夫婦」になれたのだと。生まれたばかりの愛娘を抱いた時にも、確かに誓った。この子に恥じないよう、良い父親になろうと。

しかしその舌の根も乾かぬうちに、よりにもよって秘書と不倫関係に陥るとは……己は自分で思うよりもずっと強欲で、意志の弱い男であったらしい。

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山本理沙

やまもと・りさ●84年 東京都生まれ。日本女子大学文学部卒卒業後、外資系航空会社客室乗務員、金融機関・コンサルティングファームの秘書業務を経てフリーランスへ。
2015年〜2019年に東京カレンダーWEBにて『東京婚活事情』『結婚願望のない男』『東京ホテル・ストーリー』など多数執筆したのち、2020年10月講談社文庫より初書籍『不機嫌な婚活』を出版。よみタイで好評連載中の漫画『恋と友情のあいだで』(里奈Ver.)共著原作者。『不良夫婦』では(妻side)を執筆。

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安本由佳

やすもと・ゆか●81年 奈良県生まれ。慶應義塾大学法学部を卒業後、化粧品会社広報、損害保険会社IT部門勤務を経てフリーランスへ。
2016年〜2020年1月 東京カレンダーWEBにて『二子玉川の妻たちは』『私、港区女子になれない』など多数の連載を執筆したのち、2020年10月講談社文庫より初書籍『不機嫌な婚活』を出版。よみタイで好評連載中の漫画『恋と友情のあいだで』(廉Ver.)の共著原作者。『不良夫婦』では(夫side)を執筆。

オフィシャルサイト●安本由佳
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