2023.2.8
文化人が集うゴールデン街「マチュカバー」のママにインタビューしたら、とんでもない人生の話が聞けた
カラスともコミュニケーション
麻 : 毎日行く公園では、ポーちゃんと私が遊んでるのを見て他の鳩も寄ってきて、一緒に遊んでて。で、それをじっと見てたカラスにある日、突然誘惑されたの。
山 : どういうことですか?(笑) どこで誘惑されたんですか、カラスに。
麻 : そのいつも行っていた公園。
山 : 都内ですか?
麻 : 都内。世田谷区の公園。
山 : そこでカラスに誘惑されたんですね。
麻 : うん。カラスが、最初、棒をもって、ぴょんぴょんぴょんって、私の顔を見ながら近づいて来るんよ。んで私の顔を見ながら、その棒を落とすの。んでまた私の顔を見ながら棒をクチバシで取って、またぴょんぴょんぴょんって近づいて来るん。それを何回か繰り返して、目の前まで近づいてきて。そしたらもう「遊んで」って言われてるのわかるやん誰だって。カラスって賢いからね。
山 : はい。
麻 : 私がそのカラスが持ってきた棒をクチバシからもらって、「あっち向いてホイ!」みたいな遊びをしてて。その後、私がその棒を使って、土をこう掘って見せて「あんたもし、あんたもし」って言いながらジャスチャーをして見せたら、カラスが私のしてる事をジッと見ながら、自分のクチバシで土を掘りだして。で、そのカラスが掘った穴を、私が一緒に掘って。で、私がその穴の中に、小さい石をポン!って入れて、「面白いやろー、あんたもやってみ」って言うと、カラスも真似して、私の指から小石を取って、同じ穴にポン!って入れるのよ。
山 : すごいですね。
麻 : この高度な遊びを、カラスと出会って5分以内にした。カラスって遊びの時間を持ってる唯一の野生の鳥だから。だからその遊びの時間に「遊びませんか?」ってな感じで私がカラスさんに誘われたのが最初で。
山 : 仲良くなったのは1匹だけですか?
麻 : 最初はね。それが、カーくん1号やねんけど。私が別の日に公園に行くと、カーくん1号が低空飛行で飛びながら、ひゅんって脚で私の頭を触ってくるの。「よう!」ってな感じで。ほんまの話。優しくしてくれるから痛くないし。で、「今日は何して遊ぶ?」とか言いながら、カー君のクチバシとか撫でたりしてた。そこまで許してもらってた。野生のカラスなんだけど。で、カーくん1号と遊んでると、それを他のカラスがジッと見てて。順番に「僕も遊んで」って誘われて。最終的には、カーくん5号までいた。
山 : 識別できるんですね。ちゃんと。顔で?
麻 : うん。何となくだけど(笑) 難しい子は、脚にイボがあるとかで。大体、絵に描けるくらいには識別できる。
山 : なるほど。ちなみに、カラスとのコミュニケーションって、人間とのコミュニケーショと近い部分ってあったりするんですかね?
麻 : え?(笑)
山 : いや、単純に、人間と近い部分ってあるのかな、って思って(笑)
麻 : うーん、カラスは人間の子供の3、4歳くらいの知能があると思う。それくらいの子供と喋ってるのと一緒。
山 : なるほどなるほど。
麻 : だからカラスと仲良くなりたかったら最初は挨拶から始めるの。「こんにちはー」って。まずは顔を覚えてもらう事からスタートしないとダメだと思う。ただ、気を付けないといけないのは、野性の生き物は目と目を合わすのが怖いか、子育て中の時とかは気が立ってるから、むやみやたらに目を合わせてしまうと襲われたりするからね。コツとしては顔はニコちゃんマークくらい笑った状態で、目も笑ってるんだけど、激しいくらいの瞬きをパチパチパチパチってするの。で、優しく会釈しながら「こんにちは〜」って(笑)冗談みたいに聞こえるかもだけど、これが大事なのよ。
山 : なるほど〜。簡単なようで難しそうです。ちなみに、人間の大人とカラスのコミュニケーションは完全に別ですか。
麻 : うん。違うね。やっぱ下心あったらバレる。
山 : え、どっちに? カラスに? どういうこと? (笑)
麻 : カラスにバレる。私がたとえばカメラで、こういうショット撮りたいけどなぁって思って近づいても、そのギラギラした感情がバレる。だから普通にただ純粋に「遊ぼ」ってそれだけの気持ちでいないと察知して逃げていく。
山 : いい話ですね。初めて聞きました。カラスに下心あったらバレるって(笑)
麻 : そうなんだね。私にとっては普通のことなんだけど。
山 : そもそもカラスってなんか怖いってイメージがあるので、近づかないですもん。
麻 : うん。カラスに石投げたり悪いことしたら、そんなことをした人の顔もしっかり覚えられるから。公園で面白かったのが、私がおにぎりとか食べてる時、カーくん1号が隣に座ってた知らない人のおにぎりはかっさらって行った。でも私には、そんなことは絶対にしなかった。頭に糞とかも落とされたことないし。当時カラスがすごく沢山その公園に居て、他の人はよく頭に糞を落とされてたけど、私には「この人間は遊んでくれる人」ってな感じで良くしてくれてたと思う。
山 : なるほど。
麻 : 当時は石原都知事の時代だったから、石原都知事がカラスを目の敵にしてて。噂ではある時、ゴルフ場でカラスにボールを投げて、その仕返しで頭を突かれたり、糞を落とされたりしたらしい。それを根にもってかどうかは知らないけど、カラスはいっせいに駆除されてしまった。それで私の友達のカーくんほとんどいなくなっちゃった。悲し過ぎる。
山 : 悲しいですね。その時代は、今よりずっとカラスが多かったんですね。
麻 :そう。駆除されてしまって。もったいなぁって思って。何がもったいないかって、駆除とかならずに私、あのままずーっといっぱい仲良いカラスを増え続けてたら、もし私が公園で誰かに襲われたりして「カーくん助けてー!」って叫んだら、仲いいカー君達が助けに来てくれるのでは?って真面目に思ってた。そういう事になるかもしれない積み重ねがいっぱいあったのに残念だわ。
山 : 自分の感覚的な経験から学んだことが、今の麻知子さんを形作ってるんですね。
麻 : そういうところもあるかもね。ほんとに感覚だけで生きてきたから。もちろんいろんな人にもお世話になってきたのもあるけど。昔の私は、ただの動物やった様な気がするわ。子供を産んでから、やっと人間になれた様な気がする (笑)