よみタイ

文化人が集うゴールデン街「マチュカバー」のママにインタビューしたら、とんでもない人生の話が聞けた

本当に起きた恐ろしい出来事

: 夢から学んだこと、たとえば一つだけ教えてもらってもいいですか?

: 私、子供の頃からそうなんだけど、夢で知って、現実で気づく事がよくあって。上手く言えないけど夢から学んだことは、人間も動物で、まだよくわかってない本能と向き合うのも大切だよってことかな。別の言い方をすると人間や生き物には、まだまだ解らない事や知らない事が沢山あるってことを知れたみたいな。そう思わされた具体的な話は、いっぱいあり過ぎるのと言葉で説明は難しいけど。

: 例えばどんな感じでしょう?

: 例えば、夢の中で大きな石につまずいて転けて、頭からドロドロっと赤い血が流れてひどい怪我をする夢を見たとする。で、その夢を覚えていたらなんだけど、現実の世界でその夢の中と同じような石が出てきたりするかもしれなくて。でも、夢の中ではつまずいたけど、現実の世界では、その石をまたげて、怪我をしなくてもすんだりしたり。

:うん。

: 基本は夢って記憶の整理をしたり、全くどうでもいいような内容がほとんどだと思うんだけど、稀に、本能?が見せてくる様なものも混じってたりするのかなぁって私は思ってて。悪い夢を見て嫌な気持ちになっても、自分の本能が見せてくれてる夢かもしれないから、どんな夢を見てもポジティブに解釈すれば、現実の自分の背中を押すためのヒントが混じってたりなんかするのかもって。これは私自身の超個人的な体験と考え方の話なので他の人はどうか知りません。だから私を責めないで適当に聞いてね (笑)

: はい、責めないで聞きます (笑)

: そんな感じで当時の私は本能?のおもむくまま、いろんなところに出かけていて。アホだったから、冬なのに山登りたいとか。

: (笑)

: 今より全然知識ないから。おばあちゃんの家がある田舎に帰ったある時、瑠璃寺ってところがあるんだけど、そこがどういうお寺か何も知らず急にどうしても行きたくなったから行ったの。でも真冬だからお寺は閉まってた。だけど脇道に「奥の院はこちら」の看板を見つけて、急にそこに行きたくなって。で、その矢印の先の道が、4つ足で登らないと上がれないくらいの獣道で。でも行きたいから行くんだ!の勢いで足を踏み入れた瞬間に、黒い鳥がバタバタバタ!って飛び去ったり、大きい蜘蛛が何匹もシャカシャカシャ!って一斉に出てきて。これこそ本能的な胸騒ぎみたいなのが『行くな!』って言った様な気がしたのに、それを無視して私は奥の院を目指して上がって行きました。

: うん。

: 登るの大変だったけど途中で、休憩所みたいなところがあって。真冬なのもあってか辺りは、どんよりしたゲゲゲの鬼太郎の世界で。ベンチがあったからそこで休憩しようと思って座ったら、ちょうどベンチの前にお地蔵さんが3体あったんだけど、見たら3体とも首から上がなくて、顔がお地蔵さんの体の前に綺麗に並べてあったんよ。怖くない?

: 怖いですね (笑)

: 誰もいてないし急にメチャクチャ怖くなって。「これ以上行ったらあかん」って誰かに言われてる気がしたから帰ろうと思ったんだけど、上がって来た急な獣道を降りていかなきゃダメやんか。んでそのとき、私、当時いろんな所に行っていて、それを見てた母親に「帰り道、いくら怖くても焦らんと、一歩一歩踏みしめて帰りや」って言われてたのよ。母親、どこまで私を見てたのか知らんけど。母親の言葉を思い出しながら、一歩一歩踏みしめて獣道を下って戻ったんよ。んで瑠璃寺ついたときに、なんか私おみくじ引きたくなって引いたら「大凶」って書いてあって。文章の中に「死す」って書いてあって。

: (笑)

: で急にまた凄く怖なって。お寺、閉まってるのに、お坊さんいてそうな扉をドンドンドンドン叩いてたら、奥からお坊さんが出てきて。「どうしたんすか」と。こうこうこうで怖くて、おみくじ引いたら「死す」って出たからお祓いしてほしいって半泣きで伝えたら、「野生のサルがよくイタズラでそういうことするんだよね。あの首、よく取れるんだよねー」って。私が唖然としてたら「お嬢ちゃんあんたな、真冬に登るもんちゃう。あんたがおかしい」って言われて。

: たしかに。

: お祓いはしてくれなかったけどお守りだけ買って、お参りして自転車で帰ってる途中、向こうの方で救急車とパトカー音が聞こえてて。日が暮れてからやっと、おばあちゃんの家に着いたら、大勢、親戚の人達が来てて「麻知子、あんた心配しとったんや!」って泣きながら言われて。「どうしたん?」って聞いたら、私が登った奥の院の真反対の方角から、ほぼ同い年くらいの女の子が同じように奥の院に向かって登ってたらしく。私は無事に引き返せたから良かっんだけど、その子は足踏み外して崖から落ちてしまったみたいで。それが私だと思ってみんな凄く心配してたんだけど。結果、次の日の新聞で、その女の子が亡くなったって事がわかった。それ、私やったかもしれへんって思って。

: うん。

: そういうのとかもあって。勝手な考えだけど、その女の子の分も頑張って生きなきゃあかんなとか。当時いろんな勉強をさせてもらえたというか。

: たしかに、もしかしたら死ぬのは自分だったかもしれないと思う出来事ですね。

: そんなんいっぱいあんねん。他にもいっぱいあって。

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山下素童

1992年生まれ。現在は無職。著書に『昼休み、またピンクサロンに走り出していた』『彼女が僕としたセックスは動画の中と完全に同じだった』。

Twitter@sirotodotei

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