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小野一光「限界風俗嬢」
過去の傷を薄めるため……。「してくれる」相手が欲しい……。
性暴力の記憶、セックスレスの悩み、容姿へのコンプレックス――それぞれの「限界」を抱えて、身体を売る女性たち。
そこには、お金だけではない何かを求める思いがある。
ノンフィクションライターの小野一光が聞いた、彼女たちの事情とは。

これまでの連載では、元SM嬢のアヤメ歌舞伎町で働く理系女子大生リカセックスレスの人妻風俗嬢ハルカパパ活・パーツモデルで稼ぐカオル妊婦風俗嬢・アヤカの5人の女性を紹介してきました。

前回から登場したのは、平成不況と呼ばれた90年代後半~ゼロ年代に女子大生風俗嬢として働いていたミホさん。
しかし、彼女の風俗勤めの動機は、生活のためではなく“好奇心”がきっかけだそうで――

風俗しながら大手メーカーに……平成不況下の風俗嬢事情

好奇心を満たすために始めた風俗

「最初はお客さんに触るのも嫌で、すごいテキトーだったのよ。ずっと不愛想だったし、たぶんメチャメチャ感じ悪かったと思う。でも、そうしてたらリピーターとか全然いなくて、さすがにまずいなって思い始めたのね。で、あるとき思い切って明るく元気な接し方をやってみたら、その人が帰り際に店の人に『いやー、いい子だねえ』って。それを聞いて、どうせならそっちの方がお互いに気分いいやって、割り切ってやるようになったの」
 ミホにとって風俗はあくまでも「働く時間に比べて、もらえる給料が大きい」仕事という対象である。ただし、その一方で「自分の知らない世界に対してすごく興味あるんですよぉ」と話す彼女にしてみれば、自身の好奇心を満たす対象でもあったのである。
「好奇心が強いっていうか、いろんなことを試したくなるの……」

 最初に会ったときから、ミホは自分自身が“快楽主義者”であることを公言していた。とくに当時は、対象が先に取り上げた彼氏だったようで、最近どんなセックスをしているかを詳らかに聞かされて、クラクラした思い出がある。おおまかに列記すると、服を着たままや、ローションを使って、屋外や車のなかで、あられもない写真を撮られ、縛られ、目隠しをされ、バイブを使われ……、そのすべてにおいて、彼女の提案でやってみたというのだ。また、四回目の取材で彼女は次のように語っていた。
「気持ちよくなることを追求しちゃうんだよね。だから彼氏に対して、あんなことをしてみたいって持ちかけたり、どこをどうすれば気持ちよくなるってことをちゃんと言うようにしてるの。そうすると自分の一番好きなエッチができるでしょ。最近はねえ、なんかしたってわけじゃないけど、『パンツ買いたいから一緒に来てよ』って、下着屋に引っ張って行って、エッチな下着をふたりで選んで買ったのね。乳首が丸見えの縁だけのブラジャーとか、アソコの部分に穴が開いてるパンツとか。で、それを着て楽しんでる」
 当時、彼女は二十一歳になっていたが、その話を聞いて、単純にすごいなあと驚くだけでなく、かすかに、大気圏に突入して燃え尽きてしまう隕石のような激しさと儚さを感じた憶えがある。

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小野一光

おの・いっこう●1966年、福岡県北九州市生まれ。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーに。「戦場から風俗まで」をテーマに、国際紛争、殺人事件、風俗嬢インタビューなどを中心とした取材を行う。
著書に『灼熱のイラク戦場日記』『風俗ライター、戦場へ行く』『新版 家族喰い——尼崎連続変死事件の真相』『震災風俗嬢』『全告白 後妻業の女』『人殺しの論理』『連続殺人犯』などがある。

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