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小野一光「限界風俗嬢」
過去の傷を薄めるため……。「してくれる」相手が欲しい……。
性暴力の記憶、セックスレスの悩み、容姿へのコンプレックス――それぞれの「限界」を抱えて、身体を売る女性たち。
そこには、お金だけではない何かを求める思いがある。
ノンフィクションライターの小野一光が聞いた、彼女たちの事情とは。

これまでの連載では、元SM嬢のアヤメ歌舞伎町で働く理系女子大生リカセックスレスの人妻風俗嬢ハルカの3人の女性を紹介してきました。

前回は、“処女風俗嬢”カオルの、からりとした処女喪失エピソードでした。今回は、新たに始めた“パパ活”の実態が明らかに。

食事一回一万円……“パパ活”女子の収支報告書

パパ活の相場観

「パパ活の存在自体は、デリヘルで働く前くらいから知ってはいたんです。それでまあ、一応月に四万くらいは貯金してるんですけど、それを目標にすると、やっぱり毎月カツカツなんですね。で、週末とかに、この服欲しいなあ、みたいなのがあって、もうちょっと余裕がほしいけど、風俗には戻りたくないなあ、みたいな感じで……」
「なんで風俗には戻りたくなかったんだろう?」
「やっぱりこう、風俗ってどうしても性病とかの不安がつきまとうじゃないですか。それが嫌で……」
 パパ活にも当然ながら性病のリスクはあるが、不特定多数を相手にする風俗業よりはマシとの意識があるようだ。

「どうやって相手を見つけるの?」
「それがいろいろあるんですよ。事前に調べたんですけど、ツイッター上で募集する人もいるし、あとアプリみたいなのがあって、それで募集したりとか、それこそ登録制のクラブみたいなのもあるんですね。私の場合、最初はアプリでやってみたんですけど、そのときはあまりカラダの関係とかは考えてなくて、お食事だけにしたかったんですよ。で、探してみたんですけど、やっぱりそれだと相手がいない。しかも来るメッセージが、『一回二万でどうですか?』とかで、“安っ!”て感じなんですよ。そういうのばっかりで、アプリはすぐに辞めちゃったんです」
「そのときはこっち側は金額とか書くの?」
「そうですね。こっちから提示する場合は、〈こっちはお食事一(万円)で考えてます〉とかって書いたり。でも、それに対してさっきの、二万で本番みたいなメッセージばかり来るんで、〈すいません、ちょっとそれじゃ条件合わないんで〉で、終わり、みたいな」
「食事一万ってのは成立しなかったんだ」
「しなかったです」
「それで、どういうふうにやり方を変えていったの?」
「やっぱアプリはダメだなってなって、だけど、それでも風俗で働くのはちょっとって気持ちだったんですね。で、情報サイトを見てたら、交際クラブってのがあったんです。そこに〈いま流行のパパ活で食事一回で一万円〉とかって書いてあって、それが『××クラブ』って名前で、公式サイトをちゃんと作ってあるんですよ。で、質問コーナーに、〈お食事だけで一万円ってホントなんですか?〉ってあって、それに対して〈もちろんそれだけで稼げるわけじゃないですけど――〉ってちゃんと答えてるんですね。だから、まあ一回いってみようかなって……」

 傍で聞いていると〈それだけで稼げるわけじゃない〉との文言は、その先に肉体関係が待っているように思えて仕方ないのだが、一見ちゃんとした回答がなされていることに安心してしまうのだろう。実際、勤め先の風俗店を選ぶときなど、女の子の多くは店のホームページがちゃんとしているところや、電話での店員の対応が丁寧な店を選ぶ傾向がある。つまりはそれが実体を伴わない“見せかけ”であっても、他よりもマシということで、一歩を踏み出す自分を納得させているのだ。

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小野一光

おの・いっこう●1966年、福岡県北九州市生まれ。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーに。「戦場から風俗まで」をテーマに、国際紛争、殺人事件、風俗嬢インタビューなどを中心とした取材を行う。
著書に『灼熱のイラク戦場日記』『風俗ライター、戦場へ行く』『新版 家族喰い——尼崎連続変死事件の真相』『震災風俗嬢』『全告白 後妻業の女』『人殺しの論理』『連続殺人犯』などがある。

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