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小野一光「限界風俗嬢」
過去の傷を薄めるため……。「してくれる」相手が欲しい……。
性暴力の記憶、セックスレスの悩み、容姿へのコンプレックス――それぞれの「限界」を抱えて、身体を売る女性たち。
そこには、お金だけではない何かを求める思いがある。
ノンフィクションライターの小野一光が聞いた、彼女たちの事情とは。

これまでの連載では、元SM嬢のアヤメ歌舞伎町で働く理系女子大生リカセックスレスの人妻風俗嬢ハルカの3人の女性を紹介してきました。

前回は、風俗から“パパ活”に転向したカオルが、稼ぐために奮闘する姿が明らかになりました。
濡れ手で粟、とは行かずに疲労感を見せていたカオル。しかし、同時進行で“パーツモデル”の仕事もこなしていたことがわかり――

知られざる副業“パーツモデル”の稼ぎ方

“パパ活”はもう耐えられない

「セックスで気持ち良くなれる男性とは、今後出会えるのかねえ?」
「無理でしょうね。でも、私にはシホさんがいるから」
 私は相槌を打った。すると彼女は唐突に切り出した。
「パパ活を止めようと思ったのは、昨日の帰り。もうヘトヘトになって乗った電車のなかで、バッグのなかにあるもらったおカネを見て、私、なにしてるんだろうって。そんな気持ちになって。もうダメだあ、耐えらんなーいって思って。止めようって思ったんで……。だから、しばらくはやんないと思いますけど」
「ほとぼりが……」
「ブフォッ……」
 カオルは噴き出す。そして……。
「んーっ、でもやっぱりまあ、オチンチンがあ、かわいいなあーって思うんで、たまに触りたいなあ、ヌフフフ……って思うときがあるんで、だからやりたくなるときもあるかもしんないっすね」
「そうだよねえ~」と追従した直後に、ふと思いついたことを尋ねる。
「あのさあ、パパ活についてはシホさんに話してるの?」
 するとカオルは、参ったなあという顔で笑った。
「ウフフ、いや、最初は隠してたんですよね。まあでも、バレちゃってぇ。ラインの通知をたまたま見られちゃってぇ、オファーが入りましたみたいの。いやもう、ほーーーんとに運が悪くてぇ、たまたま来たオファーを、たまたま私のスマホのアラーム(通知音)が鳴ってるのを、たまたま見ちゃってぇ、もーう、超運悪かったです」
「どうなったの?」
「いや、『なんか最近、新しいこと始めた?』って聞かれて、『じつは……』、みたいな。イヤハハハハ。でもさすがに大人の関係をしてるとは言えなかったんで、『お食事だけだよ~』って。『食事だけでぇ、一万円もらえるから、いいじゃん』ってぇ……」
 通知を見られたのは、三人目の男性についてのオファーのときだったそうだ。
 と、ここまでを話したところで、カオルはいきなり、「あ、そうだ。もう一つやってました」と素っ頓狂な声を上げた。「え、なにを?」と反射的に私は問う。

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小野一光

おの・いっこう●1966年、福岡県北九州市生まれ。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーに。「戦場から風俗まで」をテーマに、国際紛争、殺人事件、風俗嬢インタビューなどを中心とした取材を行う。
著書に『灼熱のイラク戦場日記』『風俗ライター、戦場へ行く』『新版 家族喰い——尼崎連続変死事件の真相』『震災風俗嬢』『全告白 後妻業の女』『人殺しの論理』『連続殺人犯』などがある。

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