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篠田節子「介護のうしろから『がん』が来た!」
認知症の母を介護しながら二十年。ようやく母が施設へ入所し、一息つけると思いきや――今度は自分が乳がんに!?
介護と執筆の合間に、治療法リサーチに病院選び……落ちこんでる暇なんてない!
直木賞作家・篠田節子が持ち前の観察眼と取材魂で綴る、闘病ドキュメント。

前回まではこちら→https://yomitai.jp/series/gangakita/

再建バストの見た目問題とさわり心地

介護のうしろから「がん」が来た! 第33回

 さて、昨年4月20日に乳房の切除手術を受け、12月10日に再建手術が叶ったわけだが、切除手術はもちろんこの再建手術についても医療保険が適用される。
 以前は中に入れるシリコンもお椀型しか保険適用にならなかったが、最近になって、より自然なしずく型も対象となった。
 
 再建手術がこうした形で標準治療化してきた背景には、手術による乳房喪失が、病気でただでさえ体力的に弱っている女性たちに、気分の落ち込みやうつ、不安など、深刻な心理的影響を与えてきた、ということがある。
 切除-根治治療(転移の可能性はもちろんあるが)と、見た目問題の解決が両立する、ということが期待されて盛んになった再建手術だが、実際のところは本物と同じ形状のものが出来上がるというわけではない。
 
 たとえば人工物による再建の場合、確かに中に入れるシリコンの形とサイズを選べるが、オーダーメードではないのでやはりもう片方とぴったり同じ、というわけにはいかない。
 たとえば「ヒン」の私の場合は、一番薄いものを使ったが「それでも再建した方が、ちょっと立派になっちゃうんですよね」とN先生。
「それじゃもう片方も、この際シリコン入れて立派にしちゃいましょう!」という切り返しはお約束らしく、この話をするとたいていの人から同じことを言われる。
 だが世の中、そんなノーテンキな患者ばかりではなく、再建はしたけれどイメージと違う、と落ち込む女性たちもけっこういて、医師による懇切丁寧な説明は欠かせないらしい(これは温存手術も同じ)。

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篠田節子

しのだ・せつこ●1955年東京都生まれ。作家。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。
97年『ゴサインタン』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。『聖域』『夏の災厄』『廃院のミカエル』『長女たち』など著書多数。
撮影:露木聡子

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