よみタイ

山の中腹でぽつり。40女の孤独との向き合い方

バツイチ、シングル子なし、女40代、フリーランス。 編集者、ライターとして、公私ともに忙しく過ごしてきた。 それは楽しく刺激の多い日々……充実した毎日だと思う。 しかし。 このまま隣室との交流も薄い都会のマンションで、 これから私はどう生きるのか、そして、どう死ぬのか。 今の自分に必要なのは、地域コミュニティなのではないか……。 東京生まれ東京育ちが地方移住を思い立ち、鹿児島へ。 女の後半人生を掘り下げる、移住体験実録進行エッセイ。

両親も夫も子どももいない、田舎暮らしの40代の女は孤独なのか

 私が20代の濃い時間を共有した友人のうちふたりが、30代になってひとりが北海道に、ひとりが愛媛へと移住していきました。
 私も愛媛をすっかり気に入ってしまい、4、5回は遊びに行ったと思います。誰もいない湖にゴムボートを浮かべてぼーっとしたり、岬から遊覧船という名の漁船に乗って、ダーツの矢が飛び交うようなトビウオの群れと出会ったり、東京では経験できない遊びをたくさん教えてもらいました。
 新しい環境での生活を満喫しているように見えましたが、40代になっていずれの友達も東京に戻ってきました。理由はともに、「親友が恋しかったから」。ふむ。
 私は今のところ、寂しさみたいなものを感じていないけれど、いつかそんな日も来るのでしょうか。とはいえ、東京を往復しては親友に会っているので、そもそも距離を感じなくなっていました。仕事で実際に会う人の数は減ったけれど、友人に会うことは東京にいた頃よりも増えているような? 東京にいられる時間が少ない分、会える人には会っておこうと勘が働きます。

 常に誰かと一緒にいることを望む人もいますが、私はひとりでいることも大好き。兄と6歳離れているため、子どもの頃は兄妹で同じ遊びをすることもなく、本を読んだり絵を描いたり、ひとり遊びに没頭していました。
 離婚して以来、職場兼自宅にはひとり。既にその環境には慣れていて、部屋の中にも、霧島の中にも、遊びたいことがたくさんあります。
 音楽も聴きたいし、本も読みたいし、苗を育てたいし、障子張り替えたいし、絵を飾りたいし、梅干し作りたいし、巣箱ぶら下げたいし、家にいるだけでも数え切れないほどやりたいことがあります。
 温泉入りたいし、湖行きたいし、釣りやってみたいし、島旅したいし、アナグマ見たいし、細い道の先を知りたいし、神社にお参り行きたいし、土に埋もれた階段掘り起こしたいし、外に出てもやりたいことは無数にあります。
 友人と一緒に遊ぶことも、ひとりで遊ぶことも、どちらにも違った魅力があって、私にとってはどちらも大切な時間です。

 移住を決めたとき、友人から「私なら孤独に耐えられなさそう」と言われました。孤独かと言われれば、傍から見たらそう見えるのかもしれません。両親は亡くなり、夫も子どももいない40代の女がひとり鹿児島の山の中腹で暮らしているわけで、そう分類される理由もわからないでもありません。でも、私の心の中に孤独感は探せど探せど見当たらず、欠片のようなものが見つかっただけでした。
 結局、孤独というのは、気持ちの距離であって、物質的な距離の問題ではないんだと思います。
 以前、心を病んでしまった友人から、電話がきて悩みを相談されたことがあります。その人は、私に話したのと同様、たくさんの友人に電話をしては、寂しい、孤独だと弱音をはいていました。でも、そうやって悩みを相談する相手がいるということは、本来、孤独ではないのです。
 こちらの気持ちは以前と変わらずその人の心の傍にあるのに、その人の目には私たちの心が傍にあることが見えていないようで、どこか遠くへひとり向かおう向かおうとしているようでした。
 家族の中にあっても、クラスの中にあっても、職場の中にあっても、自分は孤独だと思えばいくらでも孤独になれる。ひとりでも、山の中でも、自分は豊かだと思えばいくらでも豊かになれる。年に一度くらい、欠片からふわっと現れる物質的な孤独感は、ふっと息を吹けば立ち消えるほどに、毎日の暮らしは充実しているのでした。

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藤原綾

1978年東京生まれ。編集者・ライター。早稲田大学政治経済学部卒業後、某大手生命保険会社に就職するも、大企業の闇に触れて逃げるように宝島社に転職。ファッション誌の編集を経て2007年に独立し、ファッション、美容、ライフスタイル、アウトドア、文芸、ノンフィクション、写真集、機関紙……と、節操なく仕事を受けてきた結果、幅広い業界で編集・執筆活動を行うことに。近年もブランドムック『ANNA SUI COLLECTION BOOK』、雑誌『小学一年生』、漫画『ごろごろにゃんすけ』(村里つむぎ)、書籍『つくるひとびと』(秋山竜次/ロバート)、小説『海の怪』(鈴木光司)、カタログ『LAZY SUSAN』など、極端なノンジャンルで活動中。

インスタグラム @id_aya

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