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藤原綾「女フリーランス・バツイチ・子なし 42歳からのシングル移住」
バツイチ、シングル子なし、女40代、フリーランス。
編集者、ライターとして、公私ともに忙しく過ごしてきた。
それは楽しく刺激の多い日々……充実した毎日だと思う。
しかし。
このまま隣室との交流も薄い都会のマンションで、
これから私はどう生きるのか、そして、どう死ぬのか。
今の自分に必要なのは、地域コミュニティなのではないか……。
東京生まれ東京育ちが地方移住を思い立ち、鹿児島へ。
女の後半人生を掘り下げる、移住体験実録進行エッセイ。

霧島での人生後半戦は、まだ始まったばかり!

宇宙から見る霧島、霧島から見る私

 ピヨピヨピヨ、ピーィピーィ、ピピピピピ……。澄んだ空気に鳥の鳴き声が響き渡り、今いる場所の静けさを感じます。東京にいたときも聞こえていたはずなのに、耳には届かなかったさえずり
 宇宙まで続く雲ひとつない青空のもと、移住補助金で耕運機を手に入れた私は、雑草をすき込みながら黙々と畑を耕していました。今までキーボードを叩くばかりだった節くれだった指は、今ではすっかり腱鞘炎けんしょうえんを患っています。
 耕運機のスイッチを切って、うーんとひとつ大きく伸びをすると、私は宇宙に浮かんでいました。

 目の前にあったバレーボール大の地球をいろいろな角度から観察してみると、国同士が互いに足りないものを売り買いしていたり、どこかで戦争をやっていたり、どこかの国同士が手を組んでいたり、地球の世界では様々なことが起きているようでした。
 よく見る地図では、日本は中心にあるけれど、球体で見ると太平洋と大西洋はめっちゃ広くて、日本は一番東にある小さな島国だとわかります。そりゃ災害も多いわな。

 宇宙に浮かんだ体を、日本に向かってぎゅいーんと頭から突っ込んでいって、上からふわふわ眺めてみると、どうやら人口が偏っているようです。都会では小さな小さな無数の点が蠢いていますが、田舎ではまばらです。その点を集めたデータによると、子ども食堂なるものも、メンタルクリニックを利用する人も増加しています。中国企業が増えているようですが、それ以前から欧米企業は増えていて、国内企業の弱肉強食が進んでいます。賃金が下がっているからか、投機や副業を始める人も増えているようです。

 日本の上空に浮かんだ体を、鹿児島に向かってしゅいーんと手の指先から移動させて、上からふわふわ眺めてみると、平地が少ないことがわかります。黒豚とさつまいもとカルカンだけかと思っていたら、海も山もあって、採れる食材は実に実に豊富です。特徴的なのはなんといっても桜島。県の南部は、手で割いて薩摩半島と大隅半島に分けたような不思議な形をしています。

 鹿児島の上空に浮かんだ体を、霧島市に向かってひらりひらりと踊るように下りていって、上からふわふわ眺めてみると、だんだんと人々の暮らしが見えてきます。数々の源泉が湧く共同浴場があちらこちらにあって、ひとり暮らしの高齢者が少しずつ増えているようです。山間部と市街地ではだいぶ様子が異なります。一部の山が削られてソーラーパネルが並ぶなか、霧島神宮が周辺の土地を見守っています。

 霧島の上空に浮かんだ体を、自分の家に向かって、すーっとつま先から降ろしていって、寝室の床に足をつき、いつも寝ているベッドの上にふわりと座ると、目の前には生活があります。起きて、食べて、働いて、眠って。自分がストレスなく、ただただ心地よく生きるには、どんな環境に身を置けばいいんだろう。
 マクロの視点を知りながら、ミクロの視点でどう生きるかを考える。これが経済学の本質なんじゃないかと思っています。

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藤原綾

1978年東京生まれ。編集者・ライター。早稲田大学政治経済学部卒業後、某大手生命保険会社に就職するも、大企業の闇に触れて逃げるように宝島社に転職。ファッション誌の編集を経て2007年に独立し、ファッション、美容、ライフスタイル、アウトドア、文芸、ノンフィクション、写真集、機関紙……と、節操なく仕事を受けてきた結果、幅広い業界で編集・執筆活動を行うことに。近年もブランドムック『ANNA SUI COLLECTION BOOK』、雑誌『小学一年生』、漫画『ごろごろにゃんすけ』(村里つむぎ)、書籍『つくるひとびと』(秋山竜次/ロバート)、小説『海の怪』(鈴木光司)、カタログ『LAZY SUSAN』など、極端なノンジャンルで活動中。

インスタグラム @id_aya

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