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藤原綾「女フリーランス・バツイチ・子なし 42歳からのシングル移住」

温泉、食べ物、住まい……都会人が知らない贅沢

ジップロックに入ったお茶にフォーマットはない

 以前、見かけた近所の物産館にも訪れました。物産館と言っても、こじんまりとしていて、近所の農家さんが作っている野菜や手作りの味噌などが置かれている場所です。私はすっかりこのお店が気に入ってしまいました。
 入り口には、切り花や枝ものが信じられない価格で売っています。広尾あたりの花屋では、3倍の値がついていてもおかしくありません。
 中に入ると、マーケティングなんて知ったこっちゃないキリのいい値段で、旬で新鮮や野菜が並んでいます。見たことがないバレーボール大の柚子や、聞いたことのない名前の芋など、見ているだけで楽しくなる品揃えです。
 手作りの煮しめや鶏の甘辛煮には、「〇〇ちゃんのお惣菜」と笑顔のおばちゃんの絵が描かれたポップが添えられています。これがまた美味しい。
 そして、私はすっかりここの野草茶の大ファンになりました。ジップロックに詰められた野草茶は、レモングラスや桑、日本山人参など20種類以上の野草が混ざっていて、中には明らかにハサミで切った紙に、入っている野草の種類と効能、そして「続けているとなんとなく元気です」と書かれた紙が同封されています。
 このお茶を初めて飲んだときは驚きました。今まで、こんな味のお茶に表参道で一杯1000円払っていたような……。需要と供給で価格が決まるなんて大嘘だよなと改めて思います。

 国分のほうには、東京でもおなじみのチェーン店が建ち並ぶエリアがあります。イオンがどかーんと建っていて、いつものファミレスにいつものファーストフード、いつもの寿司屋にいつものピザ屋。霧島にお金を落とすと決めた私には、用のない場所。
 しかし、地方都市に行くと、この風景に出会わないことはありません。人口が減って、売上が伸びないとわかったら、その手の企業はすぐに撤退してしまうでしょう。判断材料は数字のみ。江戸っ子ですもの、そんな人情のない企業より、ずっと地元に居続ける企業を応援したいものです。
 スーパーに行ったときも、できる限り鹿児島産のものを選ぶようにしました。ここで生きていくからには、鹿児島という土地に生きる企業を大事にしないと。東京にいたときは、これっぽっちも気にしなかったことを気にするようになりました。
 それに、何といっても同じような街並みは面白くもなんともなく、まるで興味を惹かれないのでした。東京の街が画一化していっているのも、結局は同じ。人々が文化を形成しているのではなく、企業が文化を押し付けているようにも見えます。

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藤原綾

1978年東京生まれ。編集者・ライター。早稲田大学政治経済学部卒業後、某大手生命保険会社に就職するも、大企業の闇に触れて逃げるように宝島社に転職。ファッション誌の編集を経て2007年に独立し、ファッション、美容、ライフスタイル、アウトドア、文芸、ノンフィクション、写真集、機関紙……と、節操なく仕事を受けてきた結果、幅広い業界で編集・執筆活動を行うことに。近年もブランドムック『ANNA SUI COLLECTION BOOK』、雑誌『小学一年生』、漫画『ごろごろにゃんすけ』(村里つむぎ)、書籍『つくるひとびと』(秋山竜次/ロバート)、小説『海の怪』(鈴木光司)、カタログ『LAZY SUSAN』など、極端なノンジャンルで活動中。

インスタグラム @id_aya

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