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藤原綾「女フリーランス・バツイチ・子なし 42歳からのシングル移住」

鹿児島―東京3往復。かさむ交通費、されど豊か

東京の仕事仲間と、鹿児島の僻地で再会

 移住前に話をしていたので、家がどんな感じになったか見てみたいと、私の家でインタビューすることになりました。奥さんのタマさんと、お子さんのフキくんも一緒にやって来ましたが、インタビュー中は国分の親戚の家に顔を出してくるそうです。
 普段、東京のファッションの現場でしか一緒にならない人が、畑に囲まれた鹿児島の僻地にいることが不思議な感覚でもありました。

――弦さんは京都出身ですよね? 奥さんのおばあちゃんが鹿児島でしたっけ?

「タマのお母さんの実家が霧島にあって、まだ子どもが産まれる前から毎年夏になると鹿児島に来てたのよ。初めて霧島に来たとき、街の感じとか、人の感じとか、なんかええなあって思って。焼酎も好きやしね。それで毎年来るたびに、タマと2人でいずれ移住できればいいねってなんとなく話はしてて。航空会社の機内誌の撮影で鹿児島や宮崎にもよく来るようになったんやけど、九州人の人柄や雰囲気が合うんよね。ご飯も美味しいし、ますます『鹿児島、ありかも』と思うようになって」

――現実的に動き出すきっかけになったことはあるんですか?

「最初はぼんやり思い描いていたけど、具体的には行動していない状況で、そのうち子どもができて。2人とも、フキが小学校にあがってからだと動きにくいなあとは思ってたから、それがタイミングかな。俺が父親の影響で引越ししまくってたから、学校が変わることにすごく嫌な思い出があったのよね。保育園の友達とも、結局小学校はバラバラになっちゃうし、それだったら小学校に上がる前に何とか引っ越ししたいなと思って」

――最初から鹿児島に絞ってたんですか?

「その段階では鹿児島は第一候補だったけど、まだ決定してはいなくて。タマの実家の和歌山と、俺の実家の京都と、いわゆる関東周辺の鎌倉だとか山梨だとか、車で頑張ればなんとかなりそうなところも候補に入れつつって感じかな」

――ちなみに、東京でフキくんを育てるっていう選択肢はなかったんですか?

「東京で育てるっていう選択肢だけは、なかったね(笑)。普段、先を見据えて何かをすることはないんやけど、10年後20年後、東京で自分が写真の仕事をやり続けているイメージがまったく浮かばへんかったのよ。キャリアを積んで大きな仕事をすることも、その瞬間瞬間はいいかもしれないけど、40を過ぎて人生折り返しって時に、どういう人生を送っていきたいか考えてみたら、このまま東京で生きるのは単純に嫌だと思ったのね。もちろん、やりがいはあるし、好きだからこそやってきたけど、俺はここでずっとやっていく気はないと」

――そこから結局、最終的に鹿児島を選んだ理由ってなんなんですか?

「もともとタマとは同じ大学の同級生で、2人で住み始めたのも京都やったし、俺の両親も、友達もたくさんいるんやけど、京都は京都で新しくやることの難しさがあるのよね。それに、ある程度新しいことをやっている人ももういるし。そこそこ都会だから、せっかく東京から離れるのに環境が変わらへんと意味ないと思って、京都は外れたのね」

――わかる! わざわざ離れるなら、全然違う環境がいいですよね。

「そうそう。で、和歌山もそれなりに田舎やけど、全然いい土地がなくて、純粋に脱落して鹿児島になった感じやね。最初は日当山ひなたやまの川沿いあたりが濃厚だったのよ。でも、蒲生町かもうちょうの古民家を内見に行ったとき、2人ともすっかりやられちゃって。結局、物件が決め手やね。目の前に小学校もあるし、移住した甲斐があるくらいの田舎やし、でも空港までは20分くらいなのね。ほんまに知り合いはいいひんけど、一からスタートするには結構いいかもって話になって」

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藤原綾

1978年東京生まれ。編集者・ライター。早稲田大学政治経済学部卒業後、某大手生命保険会社に就職するも、大企業の闇に触れて逃げるように宝島社に転職。ファッション誌の編集を経て2007年に独立し、ファッション、美容、ライフスタイル、アウトドア、文芸、ノンフィクション、写真集、機関紙……と、節操なく仕事を受けてきた結果、幅広い業界で編集・執筆活動を行うことに。近年もブランドムック『ANNA SUI COLLECTION BOOK』、雑誌『小学一年生』、漫画『ごろごろにゃんすけ』(村里つむぎ)、書籍『つくるひとびと』(秋山竜次/ロバート)、小説『海の怪』(鈴木光司)、カタログ『LAZY SUSAN』など、極端なノンジャンルで活動中。

インスタグラム @id_aya

齋藤弦

1978年生まれ、京都府出身。フォトグラファー。成安造形大学卒業後、フォトグラファーとして関西を中心に活動する。2006年にロンドンに渡り、帰国後、東京をベースとして活動を開始。広告や雑誌を中心に、モードからカルチャーまで幅広く活躍中。数々の著名アーティストのポートレートも手掛け、業界から高い信頼を寄せられている。

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