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藤原綾「女フリーランス・バツイチ・子なし 42歳からのシングル移住」

男はいなくても家がある。43歳のバースデー

進むを知りて退くを知らず。行ったれ行ったれーぃ!

 家を買ったはいいものの、別に必要に迫られているわけではなく、東京での仕事は淡々と続いていきます。仕事に合わせていたら、いつまでもずるずると東京に居続けてしまいそうなので、期限を設けることにしました。
 畑の整備やリフォームとの兼ね合いを考えると、3か月後には引っ越すことができそうです。……3か月後? 自分で決めておきながら、意外と時間がないことに焦燥感が芽生えました。ここまで何かに引っ張られるように移住に向けて走り続けてきましたが、まだ何も準備ができていないような? でも、もうこの勢いのまま行ってしまいたい。この時点で、頭のなかは次の展開に向かう高揚感でいっぱいでした。
 友人の数名には何となく話していたものの、肝心のクライアントにはまだ何も伝えていません。移住すると伝えたら、東京にいる必要がない仕事だとしてもやっぱり離れていく人もいるでしょう。特にファッションの編集の仕事に関しては、撮影やコーディネートもあるので、今のペースで続けることはまず無理な話。本数を減らせば可能ですが、世の中そんなに甘くないことも知っています。

 一方で、コロナの影響もあってか、東京にいる必要のない仕事の割合も増えていきました。インタビューをZOOMで行うこともあるし、ライティングだけの仕事の場合は打ち合わせをリモートで行うだけで完結することも。
 とはいえ、コロナウイルスが拡大している最中であっても、頑として対面の打ち合わせを貫く企業もありました。そんなに広くない部屋に、恐らくここにいなくてもよさそうな人も含め10人が集まって打ち合わせをしていると、やっぱり今後がどうなっていくのかよくわからなくなるのでした。
 今進めている仕事を考えても、そろそろ告白せねば……。仕事を辞めるわけではないので、メールでわざわざ伝えるのも何だか違う気がして、兎にも角にも会う人会う人に移住することを伝えていきました。
 私にとっては既に距離を感じていない鹿児島でも、多くの人にとって鹿児島はやはり遠い南の県のようで、「なんで鹿児島⁉」とたびたび驚かれました。長いこと、移住するする詐欺を繰り返していたので、中には「やっとか!」という反応も。「最後に仕事ができてよかった」と言われたときは、あぁ、この人からはもう仕事は来ないんだなと小さく傷つくこともありました。
 ところが、徐々にポジティブな反応が起こり始めました。風の噂で聞いたという久しぶりの友人から連絡があったり、鹿児島に住んでいる人を紹介したいという友人が現れたり、鹿児島に行ってもできる仕事を打診されたり。九州出身の人たちが急に親近感を持ってくれた気もします。
 凪いだ水面に落ちた雫が、ゆっくりと波紋を広げていくように、何か行動を起こせば、何かが動き出す。それは数字では換算できない予測不可能な出来事で、ずっと経験してきたことのように思います。
 行動を起こしていれば、結果は後からついてくる。何が起こるかはわからないけれど、前進あるのみ、猪突猛進。

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藤原綾

1978年東京生まれ。編集者・ライター。早稲田大学政治経済学部卒業後、某大手生命保険会社に就職するも、大企業の闇に触れて逃げるように宝島社に転職。ファッション誌の編集を経て2007年に独立し、ファッション、美容、ライフスタイル、アウトドア、文芸、ノンフィクション、写真集、機関紙……と、節操なく仕事を受けてきた結果、幅広い業界で編集・執筆活動を行うことに。近年もブランドムック『ANNA SUI COLLECTION BOOK』、雑誌『小学一年生』、漫画『ごろごろにゃんすけ』(村里つむぎ)、書籍『つくるひとびと』(秋山竜次/ロバート)、小説『海の怪』(鈴木光司)、カタログ『LAZY SUSAN』など、極端なノンジャンルで活動中。

インスタグラム @id_aya

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