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藤原綾「女フリーランス・バツイチ・子なし 42歳からのシングル移住」

仕事、生活費、災害対策……移住の前に考えなければならないこと ——経済アナリスト・森永卓郎さんに聞く

都会・トカイナカ・田舎。住む場所で異なる生活コスト

――“トカイナカ”?

「私は東京から50km前後離れている、道路で言うと圏央道が走っているあたりの場所を“トカイナカ”と呼んでいます。この辺りに移るだけでものすごく環境が変わるんですよ。都心に出るのに、ドアツードアで90分くらい。田舎に行くかトカイナカに行くかどちらかですが、藤原さんの年齢だったら田舎の方がいいかなとは思います。でも、問題は仕事ですよね」

――はい。リモートワークが進んでいるとはいえ、という感じです。

「リモートワークが増えたとはいえ、行かざるを得ないことが残っているのであれば、田舎とトカイナカではコスト距離が全く変わってきます。トカイナカの場合は往復でも千数百円くらいです。お金がある人というか、ギャラが高い人は田舎に出ていっても採算が取れるのですが、じゃあ1回の打ち合わせや会議で、東京―鹿児島間の交通費を賄えるかという大きな問題があります。どこまで高いコスト距離を負担できるかということにかかってくるのではないでしょうか。私が今住んでいる場所は駅から距離が離れているし、ここに越してきた時は、周りに人家もないようなところだったんですよ。今は家がいっぱい建っちゃったんですけどね」

――コロナ禍ではどのような生活を送られているのですか?

「私はトカイナカで、博物館と畑をやっています。だから、博物館の展示作業と畑の作業をやっていたので、することがなくてストレスということは全くありませんでした。こっちに住み始めると、東京が物凄い人混みだと気づきます。人に酔っちゃうくらい。でも、今住んでいる場所はそんなに人がいないし、博物館でも畑でも基本的にはひとり。マスクもいらないし、普通にタバコも吸えます(笑)。だから、全くストレスは感じませんでした。博物館も畑も好きなようにやっています。結局、生産性を上げたり、いっぱい稼ごうとしたりすると、仕事っていうのはどんどんつまらなくなっていくんですよ。だから、少なくとも老後を考えた時、生活するために嫌な仕事をずっとし続ける人生はどうなのかなあと思います」

――幸い、私はこの仕事が好きで、できれば長く続けられればと思っています。ただ、移住すれば、やっぱり仕事は減る気がしますし、田舎で暮らすコストも気になっています。

「実は、田舎よりもトカイナカの方が物価は圧倒的に安いんですよ。田舎に行くと、大型店が少なくなるので、どうしても物価が高くなってしまいます。そして、もちろん都心も物価が高い。物価に関していうとトカイナカくらいのところが一番安いんです。競争が激しくて高い値段を取れない構造になっているので、そんなにたくさんお金がなくても暮らせるんですね。特に、これから年金はほぼ間違いなく給付が落ちていきます。私の計算だと、30年先には、夫婦で月13万円くらいじゃないかと考えています。厚生年金と国民年金を合わせた時の金額がそれくらいで、単身だと厚生年金だけで9万円くらいになってしまうんです」

――私の場合、会社務めは7年ほどで、その後は国民年金なので、月に4万円くらいしかもらえないということですよね? 先日、数十年後には、ロスジェネ世代である単身女性の約半数が貧困に陥るという記事を見ました。

「大都市って、お金がある人にはすごく楽しい街なのですが、お金がないと全然楽しくないんですよ。でも、田舎やトカイナカだと、お金がなくても楽しいことがいっぱいあるんですね。他にも、うちには食糧や水などの備蓄もありますが、畑があると多分1ヶ月くらいは飢え死にすることはありません。掘れば芋が出てくるという状況なので」

――それもひとつの安全保障ですね。

「去年は100坪くらいでやっていたのですが、さすがに草取りがきつくて30坪に絞りました。でも、30坪あれば家族が食べる分の野菜は十分採れます。何を作るかも、どう育てるかも自由。私はトマトをジャングル方式で育てていて、夏野菜なのに去年は12月まで採れました。一方で、旬が終わったらさっさと片付け、常に旬なものを植え替えていく人もいます。そこは趣味の違いだけなんです。仕事って、全部自分の思い通りにできることが一番楽しいと思うんですよ。その対極にあるのが、大都市のルーティンワークなんだと思います。だから、ずっとお金を稼ぐためではなくて、楽しい仕事をいかにし続けるかということが人生にとって一番大切なのかなと思います」

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森永卓郎

1957年生まれ。東京都出身。東京大学経済学部経済学科卒業後、日本専売公社、日本経済研究センター、経済企画庁総合計画局、三和総合研究所(現 三菱UFJリサーチ&コンサルティング)主席研究員等を経て、現在は獨協大学経済学部教授を務める。経済アナリストとして各種メディアで活躍するほか、バラエティ番組などにも登場し、お茶の間でも人気を博している。格差社会の弊害をいち早く指摘し、ワーキングプアの問題にも早くから警鐘を鳴らして注目を集めた。近著に、『森永卓郎の「マイクロ農業」のすすめ: 都会を飛びだし、「自産自消」で豊かに暮らす』、『相続地獄~残った家族が困らない終活入門~』などがある。

藤原綾

1978年東京生まれ。編集者・ライター。早稲田大学政治経済学部卒業後、某大手生命保険会社に就職するも、大企業の闇に触れて逃げるように宝島社に転職。ファッション誌の編集を経て2007年に独立し、ファッション、美容、ライフスタイル、アウトドア、文芸、ノンフィクション、写真集、機関紙……と、節操なく仕事を受けてきた結果、幅広い業界で編集・執筆活動を行うことに。近年もブランドムック『ANNA SUI COLLECTION BOOK』、雑誌『小学一年生』、漫画『ごろごろにゃんすけ』(村里つむぎ)、書籍『つくるひとびと』(秋山竜次/ロバート)、小説『海の怪』(鈴木光司)、カタログ『LAZY SUSAN』など、極端なノンジャンルで活動中。

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