2021.10.22
仕事、生活費、災害対策……移住の前に考えなければならないこと ——経済アナリスト・森永卓郎さんに聞く
森永卓郎さんに聞く、都心に住むことの大きなデメリットとは何か
――森永さんは、端から見ていると、とても充実した生活を送っているようにお見受けします。お金は手段であって、人間の豊かさとはまた別にあると思うのですが、森永さんは豊かさとはどのようなものだと考えていますか?
「やはり、好きなことをして生きている人が豊かだと思うんですね。そういう意味では、都会に住んでいる人達は、今回のコロナ禍ですごく不幸だったんですよ。小さな家にずっと閉じこもっていなきゃいけなくて、感染のリスクも地方と比べればめちゃくちゃ高い。東京の最大の魅力であるお洒落なレストランや魅力的なエンターテインメントも全部閉まってしまいました。欲求不満の塊になっても、高い家賃を払い続けるためには、やりたくもない仕事を歯を食いしばってやるというライフスタイルになってしまったわけです」
――東京の一極集中で、都会に住む人は増え続けてきましたが、ここに来て価値観が一変したように見えます。
「多分、そこに追い討ちをかけるのが災害です。私は、恐らくもうすぐ首都直下型地震が来ると思っているのですが、大都市で地震が起こるとめちゃくちゃになることは目に見えています。なぜ東京が地震に弱いかというと、つい最近まで東京の大部分は海だったんですね。だから地盤がとても弱いんです」
――以前、地震研究所に取材した時も、南海トラフの話が出て、いつ起きてもおかしくない状況だと聞きました。
「それに、今のところは来ていませんが、線状降水帯が東京上空に停滞したら、23区の1/3が水没してしまいます。これは大阪でも名古屋でも一緒なんですね。東京は莫大な公共投資をして、時間雨量が100mmでも大丈夫なように治水対策をしているのですが、最近の地球温暖化でとてつもない豪雨が降るようになってしまいました。もしそれが東京で起こると、荒川が決壊します。私の東京の事務所は東京駅の近くの八丁堀にあるのですが、そこに至っては最大水深3mくらいになるんですよ」
――私の実家はまさに荒川の近くで、0メートル地帯と呼ばれる場所なんです……。
「そんなすごく危険な状況の中で、つまらない仕事をずっと続けることが本当にいいのかという話にもなってきます。私はもともと東京で生まれて東京で育ったのですが、今回のコロナを機に、東京はもうダメだと思ったのが正直なところです。ただ、藤原さんの連載を読んでみると、大都市か地方かという二者択一になっているんですけど、実はもうひとつ“トカイナカ”という重要な選択肢があるんです」