2024.2.25
命の恩人、まんきつさんへの十年越しのラブレター。『そうです、私が美容バカです。』は“人生の聖書”である
この本で紹介されている美容法で参考になったものといえば、やはり切開リフトの体験記である。美容整形に関してはやりたい人はやればいい。ただ、自分はしなくてもいいかな……というのが私のスタンスだ。
なんて偉そうに言っている私も、たった一度だけ鼻の整形をしようと思ったことがある。長年付き合った女を他の男に寝取られ、可愛がってくれていた職場の先輩もこの世を去り、まさに人生のどん底にいた頃の私は、整形の力を借りて、このくそったれな人生を変えてやろうと試みた。
ステルス戦闘機や水道の蛇口に似ているなど、子供の頃から散々な言われようをしてきた私の鼻。鼻が潰れているだけでどうしてこんなひどい目に遭わないといけないんだ。この呪われた鼻の形を整えることで新しい一歩を踏み出すぞ。そう思う反面、「いや、この鼻だからこその私じゃないのか。鼻をイジるということは過去の私を否定することだ。それは同時に、こんな鼻の男を愛してくれた女たちをも否定することにならないか。ダメだダメだ。私はこの鼻のまま幸せになりたい!」と土壇場で踏みとどまり、手術を思いとどまった経験がある。
などとかっこよく書いてはみたものの、要はビビっただけなのである。もしあのとき、まんきつさんのこの本が傍らにあったら、私はきっと手術に踏み切っていたような気がする。人にそうさせるだけの熱さがこの本にはある。
知識補填や実践結果よりも、まんきつさんが何を思い、どう考えて美容に取り組んでいるのか、その思考の部分こそが、よりよい人生を過ごすための生きるヒントになるのではないか。良い文章の条件とは何か。それは、余計な修飾を用いず、思ったことを素直に書くことだ。私のような野良作家風情だと、素直に書くことを恥ずかしがって、笑いを足すとか洒落たことを書こうとしてそこから逃げてしまう。だが、この本でたびたび描かれる、まんきつさんの美容に対する真摯な想いは簡潔かつ美しい。そうか、まんきつさんの美の本質は、見た目ではなくその心模様にこそあったのだ。
美容に興味がある人はもとより、人生に悩んでいる人こそ『そうです、私が美容バカです。』を手に取って欲しい。自己啓発本とか積み立てNISAの本では教えてくれない、あなたの毎日を楽しくする自己満足の世界をこの本は教えてくれる。
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本の感想はこれぐらいにして、最後にまんきつさんへのメッセージを。
十年前、まだ何者でもなかった私が、「遺書」のつもりでインターネットに書き殴っていたブログを世間に紹介し、デビュー作『死にたい夜にかぎって』につながる編集者との縁も取り持って頂いたまんきつさん。なぜ見ず知らずの私にそこまでしてくれるのかと聞いたとき「面白い人が面白い事を書き続けてくれたらワクワクするから」と答えてくれたことを私は忘れません。あなたはきっと覚えていないだろうけど。まんきつさんがいなければ爪切男という作家は存在しておらず、私は今頃どこかで野垂れ死んでいたことでしょう。心から感謝しています。あなたから貰った数々の言葉とサイン本はかけがえのない宝物です。「爪切男さんへ」ではなく「瓜切男さんへ」と漢字を間違えていたとしても、それは変わりません。
犬好き、サウナ好き、と同じものを好きになる傾向が強い私たちだが、まさか美容でも繋がることになろうとは不思議なものです。
昨年、まんきつさんが開催されている美容トークイベントのゲストとして登壇させていただきました。命の恩人と同じステージに立たせてもらえるなんて本当に光栄でした。
あなたが、次は何に興味を持っているのかと最近のインタビューを拝見したところ、ムエタイに挑戦したいと書いてありました。
はい、わかりましたよ。それなら私もムエタイを始めることにします。次に私たちが出会うのはリングの上ですね。KOという形で最高の恩返しをさせていただきます。
あと、前から勧めてくださっていた肛門日光浴にも、そろそろ真剣に取り組んでみようかなと思っています。
最後に新刊の表紙をオマージュした写真を送りますね。
これからもずっと美しく、そしてヤバい人でいてください。
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当連載は毎月第2、第4日曜更新です。次回は3月10日(日)配信予定です。お楽しみに!
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