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MEGUMIに人生を救われたおじさんが『キレイはこれでつくれます』を読んで考えたこと

 こんなにも素晴らしい本を書いてくれたMEGUMIに何か恩返しができないものか。
 この本を参考に「美容」を続けていくことが当然のこととして、私にしかできない恩返しって何かないものか。
 そこで私は、喫茶店や電車など、とにかく人目に付きやすいところで『キレイはこれでつくれます』を読むようにした。もちろんブックカバーは付けずに。笑うなら笑えばいい。でも、いい歳をした太っちょおじさんが美容本を読んでいるのは何にも恥ずかしいことではない。女性だけでなく男性も「美容」に興味を持ったっていいじゃないか。一種の啓蒙運動のつもりで、私はMEGUMIの本をこれからも読み続ける。私に「自信」をとり戻させてくれた「美容」とMEGUMIへの感謝の気持ちを込めて。

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 MEGUMIの本を何度も読み返し、美容に関する知識に多少の自信を覚えた私は、同棲中のパートナーに対し、ちょっとデカい顔をしてやろうと思い立つ。
「知ってる? クレンジング用品って水と混ぜ合わせて使った方が効果あるらしいよ。乳化っていうんだ」と覚えたての知識を嬉しそうに披露する太っちょおじさん。
 たいそう得意気な顔をしていたのであろう私に対し「かわいいねぇ。いっぱい勉強したから褒めてほしいの? でもね、それぐらいの知識はみんな知ってるの。あんたが今いる場所は美容のまだ一丁目。これからたくさん迷子になりながらせいぜい頑張んなさい。だからさ……あんま調子にのんなよ」
 そうか、ここはまだ果てなき美容の道のまだ一丁目。先はまだまだ遠い。天竺を目指して旅をする三蔵法師になったかのような気分だ。だが簡単にゴールが見えないからこそ余計にワクワクしてくる。人生も半ばを過ぎた四十代にして、こんなにも前向きな気持ちになれたことが何よりも嬉しい。
 ちょっと口の悪い彼女とMEGUMIの美容本と一緒に私だけの美容の旅は続くのだ。

(イラスト/山田参助)
(イラスト/山田参助)

当連載は毎月第2、第4日曜更新です。次回は8月27日(日)配信予定です。お楽しみに!

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爪切男

つめ・きりお●作家。1979年生まれ、香川県出身。
2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)にてデビュー。同作が賀来賢人主演でドラマ化されるなど話題を集める。21年2月から『もはや僕は人間じゃない』(中央公論新社)、『働きアリに花束を』(扶桑社)、『クラスメイトの女子、全員好きでした』(集英社)とデビュー2作目から3社横断3か月連続刊行され話題に。
最新エッセイ『きょうも延長ナリ』(扶桑社)発売中!

公式ツイッター@tsumekiriman
(撮影/江森丈晃)

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